消費増税「再延期」をするべきではない理由 経済学的に見た、正しい消費増税の考え方

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不安の第一は、「2014年4月のように消費税増税で景気が腰折れしてしまうのでないか」という懸念でしょう。一方、期待の方といえば、「経済が成長さえすれば税収も増えて消費税増税など必要ないかもしれない」と成長戦略に期待を寄せているのかもしれません。あるいは、「日銀が国債を保有してくれるかぎり国債返済の心配など必要ないかもしれない」と金融政策に期待を抱いているのかもしれません。

以下では、消費税増税に関して、人々が漠然と持っている不安や期待について、1つ1つ丁寧に検証していこうと考えています。

消費税増税による税収なんてわずか…ではない

その前に、消費税率の2%引き上げが財政再建にとっていかに重要なものかを再確認しておきたいと思います。

実は、2%の消費税率引き上げで得られる税収は年間4兆円程度と見積もられ、これから毎年得られる税収として考えると、800兆円に達する国債発行残高の4分の1に相当する200兆円の返済をまかなうことができるのです。以下では、そのことを見ていきましょう。

軽減税率の影響をどこまで見るのか不確定な要素も多いのですが、消費税率2%の引き上げで年4兆円ほどの税収が得られると仮置きしましょう。みなさんは、この程度の税収では、2015年度末で807兆円に達する国債残高に比べて焼け石に水でないかと考えられるかもしれません。しかし、消費税率引き上げによる税収増は、実施年度に限ったわけではありません。その翌年度も、その翌々年度もというようにずっと続きます。こうした税収増は、「ずっと続く」という意味で恒久財源と呼ばれています。

ここで、簡単な問題を解いてみましょう。今、将来の金利水準が平均して年2%で推移するとします。みなさんは、現在の金利水準は、ゼロどころか、マイナスなので、年2%は高すぎると思われるかもしれません。しかし、たとえば、今、政府・日銀が目標としている年2%のインフレ率が達成された経済環境では、年2%の金利水準は決して高いわけではありません。
それでは、消費税率の2%引き上げで得られる年4兆円の税収に相当する金利収入を得るには、どれだけの貯金があればよいのでしょうか。簡単な計算ですが、年2%の金利のもとで200兆円の貯金から生まれる年間金利収入が、200兆円×2%で4兆円に相当します。

こうした計算を頭に入れてあらためて消費税増税の意味を考えてみると、消費税率2%の引き上げで国家は200兆円を追加で貯金できることになります。200兆円の数字は決して小さいものではありません。かなり大胆な想定ですが、消費税率を一挙に8%引き上げれば、200兆円/2%×8%で800兆円となって、現在までに発行された国債残高807兆円のほとんどを帳消しにできるだけの税収が将来にわたって得られるわけです。

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