円高は米中密約で日本が犠牲になった結果だ 武者陵司が読むG20の「舞台裏」

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ルー財務長官(中央)は、麻生太郎財務大臣(右)を袖にしたのか(写真:ロイター/アフロ)
2016年が始まってから4カ月、日本株は依然として不安定な動きから抜け出せていない。120円台で推移してきたドル・円レートも4月に入り110円を下回る水準まで円高が進んだ。この背景には何があるのか、武者リサーチの武者陵司代表(元ドイツ証券副会長兼チーフ・インベストメント・アドバイザー)に聞いた。

米中が2月の上海G20直後に「密約」

ここ数カ月間の円高は、ファンダメンタル的に考えれば非常に不可解だ。経済が強い国の通貨が高くなり、弱い国の通貨が安くなるのが普通であり、日本より経済が好調な米国の通貨が安くなる理由はない。ところが、現実はドルが売られ、劣位にあるはずの円がどんどん買われている。理屈に合わない動きはすぐに是正されると思っていたが、この傾向が2~3カ月も続いている。

だが、最近になってようやく事情がハッキリしてきた。先週末、米国ワシントンで20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開かれたが、15日の会見では、米国のジェイコブ・ルー財務長官が「最近は円高が進んでいるが、世界の為替市場は秩序だっている」とコメントした。これは今年2月に上海で行われたG20ではなかった発言で、日銀が模索している円売り介入に対する明確なノーサインだ。

おそらくこの背景には、米国と中国の間の密約がある。米国の考えでは、世界経済の安定にとっては、中国からの資金流出を止め、人民元の暴落を阻止することが不可欠となる。かりに人民元が暴落となれば、世界的な金融危機となることが明らかだからだ。ルー財務長官は2月のG20の閉幕後、北京を訪れて李克強首相と会談しているが、そこで中国に人民元の価値を守ることを約束させたのだろう。

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