円高は米中密約で日本が犠牲になった結果だ 武者陵司が読むG20の「舞台裏」

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人民元の価値をどんな手を使ってでも守るのが米国の考える秩序だ。だが、中国からすれば、人民元を安くし、輸出競争力を強くすることで国内の景気停滞にテコ入れをしたいという誘惑がある。中国にダメと言うならば、他国の自国通貨安政策にも同じように対すべきと、中国は米国に求めたはずだ。

その一番のターゲットとなるのが、中国の主要貿易国である日本だ。日本はここ数年にわたって続いた元高・円安で対中での競争力が劇的に回復し、貿易収支が改善した。日本では円が不当に高かったことの是正と考えている人も多いが、少なくともここ3年の動きとしては、急速に人民元が高くなり、中国の競争力が落ちたことは間違いない。

その円が日銀の介入によって弱くなることは、中国にとって絶好の元安誘導への口実を与えてしまう。だから、ルー財務長官はことさらに日銀による円売り介入を牽制したのだ。つまり、中国を抑え込むための生け贄になっているのが日本の円だということだ。

内需拡大策が円高・株安阻止のカギに

今の日本における株安、景気悪化などの諸悪の根源は円高であって、現在の為替水準は行き過ぎだとは思う。だが、こうした背景がある中では、円高・株安の悪循環からはいかんとも抜け出しがたい。円高是正が期待できない以上、日本は内需を軸に経済を持ち直さざるを得ない状況に追いこまれている。

内需創造という観点で言うと、安倍首相は金融緩和、財政政策、構造改革の三本の矢で国内需要創造へとフォーカスしており、その方向性は間違っていない。安倍政権が外国投資家の納得できる内需拡大シナリオを構築できれば、円高・株安のサイクルを止めることにもつながるだろう。

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