関西電力、原発再稼働に頼った戦略の危うさ 再稼働には「訴訟リスク」が待ち受ける
電力業界2位の関西電力と3位の中部電力が、最近になって対照的な中期経営計画を発表している。
関電は4月28日、今から3年後の2019年3月期の経常利益(電力やガスなどの総合エネルギー事業の合計額)を、1700億円に引き上げる目標を公表。先立つ3月23日に、中電は3年後の連結経常利益について、1500億円以上を目指すとした。
2016年3月期の電力会社の決算では、原油やLNG(液化天然ガス)の価格急落で火力発電に必要な燃料費が電気料金に先行して下がったことで、特有の"タイムラグ益"が急増。これを除いた実質ベースの連結経常利益を見ると、中電は約600億円、関電は約400億円にとどまっている。そこから3年で約1000億円積み上げ、共に東日本大震災前の水準に戻すというのだ。
だが、こうした目標を達成するうえでの戦略は、両社で大きく異なっている。
中電は浜岡原子力発電所(静岡)3、4号機の再稼働を目指すとしつつも、中計の目標数値を「再稼働がなくとも達成できるように努力する」(勝野哲社長)。そのために火力発電を中心に徹底したコスト削減に取り組む。
一方、関電の目標達成は「高浜(福井)3、4号機、大飯(同)3、4号機の再稼働が前提」(八木誠社長)だ。2016年3月期決算とともに中計を発表した八木社長は、「原子力規制委員会から再稼働の許可を得られるように、最大限の努力をする」と強調した。
原発再稼働が生命線だが、対策費も重い
原発に頼らずに目標達成を目指す中電に対して、関電はあくまでも原発の再稼働をテコにした収益回復の道を模索する。それは両社のもともとの原発依存度の違いに起因している。
東日本大震災前の2010年3月期で比べると両社の違いは一目瞭然だ。自社発電量に占める原子力の割合は、関電が53%と業界最高だったのに対して、中電は12%。大震災後に原発が運転停止に追い込まれたのを受け、両社とも火力の発電量を増やして不足分をカバーしてきたが、動かない原発を多く抱えた関電は火力燃料費の負担が大きく4期連続赤字に陥った。
その関電を救ったのが、経済産業省による2度にわたる料金値上げの認可と、昨年来の原油・LNG価格の急落だ。関電は2016年3月期に5期ぶりに黒字を回復。ようやく窮地を脱しつつある。
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