「コンテンツではなく娯楽」 新世代リーダー 川村元気 映画プロデューサー(下)
「ガラパゴスは駄目」というのは、単純に欧米の価値観からの意見です。それよりも、「ガラパゴスは楽園だ。でも、このままでいいのだろうか?」という順番で考えたほうが発見があると思う。
——そもそも、「変えるべきなのか」っていう問題もありますよね。
変わった先に何があるのか、というところがあまり見えてない気がする。
これからのエンタメを考えるヒントは、生活実感の中にある気がします。映画なら、映画そのものよりも、誰と観たか、どこで観たか、そのとき自分がどういうテンションだったか、ということのほうに意味がある。映画館にわざわざ出掛けて、スクリーンを2時間見るというリアルな行為というものの価値が、問われてくると思います。
——映画館をプロデュースしてみたらどうですか。
映画館作ってみたいですね。つい最近、ユニクロの店舗デザインを手掛けたインテリアデザイナーの片山正通さんと「もし僕たちが映画館を作ったら」みたいな話で盛り上がりました(笑)。
シネコンという形態自体は効率化の究極系なので、もう変わらないと思います。ただ、デサインやストーリーによって、そこに何か新しい価値を生めるのではないかと。
本でも、本を買う行為だけだったら、WEBのほうが圧倒的に効率的。それでも本屋に行くのは、本を買うに至るまでのプロセスが面白いから。読書体験って、ただ何か面白い物語を読むということだけではないような気がするんです。
だから今回の本も、デザインやストーリーという部分は、すごく意識的に作りました。
装丁は鈴木成一さんという日本一の装丁家の方にデザインしていただきました。鈴木さんは、本を触ったときの気持ちよさとか、読んでいる時の文字のバランスとかまですごく計算している。
——みんな、作品の内容だけに目が行き過ぎなのかもしれないですね。
そう思います。だから、僕はコンテンツという言葉を使わないようにしています。
——では、何なんでしょうか?
エンターテイメント、娯楽です。
(撮影:今井康一)
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