「コンテンツではなく娯楽」 新世代リーダー 川村元気 映画プロデューサー(下)

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——それは、映画ですか文章ですか?

文章です。なぜかというと、『マルサの女』などの傑作はあるんですが、映画はおカネを描くのが苦手です。たとえば、10億円の映像を映画で撮っても、「どうせその札束は撮影用の偽物でしょ?」と思われて、リアリティが出ない。でも、文章で100億円のゼロが並んでいるのを見ると、「おおっ!」という感じがするじゃないですか。

人間には、どんなに大人になっても自らの感情をコントロールできなくなるものが3つある。それは、生き死にと恋愛とおカネです。

どんなに知恵がある人でも、おカネに狂わされてきたのが人間の歴史。明日死ぬかもしれないという恐怖と同じように、おカネがなくなるかもしれないという恐怖や、おカネをもっと欲しいという欲望が、人間を簡単に壊してしまう。

若い人はおカネの怖さを知っている

みんな、おカネ持ちになるために、長財布を持ったりしますが、仮にお金持ちになったとして、その先に何があるのか。いいマンションを買って、いい車に乗って、浮気して離婚されて、広いマンションで一人暮らし、という友人もいますが、それが楽しいのかな、と。

もしおカネがなければ、小さな家かもしれないけれども、可愛い子供と一緒に幸せな暮らしを送れていたかもしれない。それを俯瞰したときに、どっちが幸せだったんだろうかと……。

「おカネがいっぱいあったら幸せ」という価値観はもうとっくに壊れています。おカネを求めなきゃいけないという構造が破綻していると思うんです。その違和感をワーッて言ったらどうなるんだろうかと(笑)。

——若い人はもうかなりおカネに冷めていますよね。

おカネの恐怖を知っていますよね。

——ただ、おカネは怖いですけど、軽んじることもできない。そのバランスが難しいですね。

「おカネはなくていい」と言うほどカッコつけられないですよね。おカネは欲しいし、おいしい物は食べたいと思う。だから、みんな、あまりおカネについてしゃべらない。「おカネが好き」だと言うのはタブーだし、「おカネはいらない」と言うと、うそつけって思うし。おカネについて語るのは線引きが難しくて、そこが面白いところ。

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