"理系ママ"、少女の心で世界に挑む 新世代リーダー 上川内あづさ 名古屋大学大学院教授

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奥の部屋では、研究室の学生が氷で麻酔したハエから脳を取り出す作業中だった。使っているのは、研いだピンセットのみ。慣れると、1匹解剖するのに5分もかからないそうだ。上川内さんを含め、誰も白衣を着る習慣がない。実験器具も手作りのものが並ぶ。雰囲気は、中学校の理科室といったところか。研究室のメンバーも8人と少ない。だが、ここで、世界最高峰の研究がなされている。

動物が何を言っているのか知りたい

その少数精鋭の研究室を引っ張る上川内さんは、1児の母でもある。一流の研究者としての仕事と、子育ての両立にはさすがの上川内さんにも苦労があったという。

そもそもなぜ、上川内さんはハエの世界に足を踏み入れたのだろうか。意外にもそのルーツは、小さいころから鳥やハムスター、魚などを飼ってきた生き物大好き少女が見た夢にあった。

「私たちが言葉や音楽のような音をどうやって理解しているのかを知りたい、と昔から思っていたのがこの道に入ったきっかけかもしれません。

人は人の言葉を理解しますが、鳥のさえずりは理解できません。でも、脳の中でどういう情報抽出が行われているかがわかれば、鳥が何を言っているのかもわかるかもしれない。直接その研究をしているわけではないのですが、犬が何を言っているのか、猫が何を言っているのかも、わかったらステキだろうなぁと思っています。

なぜ音楽を美しく感じるか、その手がかりがハエなんです。

それから、好きな音楽と好きじゃない音楽が人それぞれある一方、多くの人が共通でいいと思う、ベートーベンのような音楽もある。現代音楽のように、一般的にいいと思われなくても、ある特定の人をすごく引きつけるものもある。そういうことがとても不思議だと感じています。

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