ダイキンとも親密、最優秀企業率いる中国女性経営者の手腕
エアコン大手で日本のダイキン工業と合弁会社も設立している珠海格力電器(格力電器)の董明珠董事長(会長)は今年8月末、新経営陣を従えて株主総会に姿を現した。チャイナドレスをまとい、足にはハイヒール。髪をアップにした優雅な装いは、まるで女王のような風格だ。
今年5月以来、董は格力集団董事長、格力電器董事長・総裁の3つの職を兼任している。権力一極集中の「董明珠時代」に入ったのだ。董はライバルたちから恐れられ、「格力に追いつく望みを失った」と落胆する同業者もいるほどだ。
技術革新で会社を成長させた董は、今後もこの路線を重視するのか。あるいは、前任の朱江洪を追い越し、新時代を切り開くのか。「中国で最も優秀な上場企業」とされる格力の将来は──。
董は前任の朱江洪から権力をスムーズに引き継いだ。多くの従業員がその変化を感じなかったほどだ。中国の電機業界で朱と董は「最高のコンビ」だった。朱が生産と技術開発、董が市場と財務を担当。二人で格力電器を「中国の最優秀上場企業」に育てた。一方で、董は技術は専門外との声もある。
董は就任後、技術部門に製品の構想やコンセプト、デザインに関する要求を出した。技術の先進性と創造性を求める董の考える製品は、「斬新、かつライフスタイルを変える」ものだ。8月の株主総会で発表された新製品は、董に何度もダメ出しされてようやく日の目を見たもの。「董総裁は理想主義者。周りがいいと思ってもダメだと言う。そして不可能を可能にしてしまう」と格力電器副総裁の望靖東は尊敬を込めて言う。工業設計センター部長の呉歓龍も「朱総裁は技術ベースだったが、董総裁は消費者目線だ」と話す。