ダイキンとも親密、最優秀企業率いる中国女性経営者の手腕
エアコンでシェア4割 技術革新の追求に力
技術にばかり頼ってもいけない。董は「企業に最も重要なのは管理。優れた管理がなければ優秀な人材は生まれない。優秀な人材がいなければすべては空論だ」と言う。
董は2001年の格力電器総経理(社長)就任後、幹部を整理した。十数年後の今、董事長となった彼女は、幹部にさらなる自己反省を求めた。企業が大きくなれば、幹部の自律性が弱まると考えたのだ。
「間違いを犯すのは権力を握る者であり、一般従業員ではない。会社の権力を使って私利私欲に走る幹部は会社に悪影響をもたらす。これには厳しく対処する。見つけたら即、クビを切る」と董は言う。しかしこの論理でいくと、最も間違いを犯しやすいのは董本人だ。この点こそ大株主と外部が懸念するところだ。
これに対し董は「頭脳をつねに明晰に保ち、施策決定は株主と従業員の利益を考えることを肝に銘じていれば、間違った決定はしない」と言い切る。董には権力を濫用しない自信がある。董は「私は間違ったことはないし、それを認めたこともない。私はつねに正しい」とさえ言う。
董の部下は皆、董を恐れている。畏敬の念と、董の厳しい要求を満たさなければというプレッシャーは強い。ウソをつく人間を最も嫌う董をだますのは難しい。「ウソをつく人間は企業に忠実でなくなる。些細なことでウソをつく人間は、大きな事を担当しても同じことをする。格力は不正行為やインチキをして人をだます人間を許さない」と董は言う。
董は、リーダーは冷静な判断力を持つべきだと考える。不公平な施策は不公平な結果を招くからだ。アピールのうまい人間を重用し、骨身を惜しまず働くがアピールしない人間を不遇にするような環境は、企業に大きな損失をもたらす。不公平、不公正な環境と人材育成体系では、ずるがしこい人材しか育たないとの信念を持つ。