僕が「為末大学」を作ったワケ 新世代リーダー 為末大 元プロ陸上選手
ビジネスの起点はあくまで日本
突き詰めて考え、たどり着いた仮説を実行に移す。その結果を検証しながら、さらに最適な解を探る――。陸上競技で大成できたのも、独特の感性がベースにある。為末は中学3年生のときに、200mで当時の中学記録を更新するほどの飛び抜けた選手だったが、実はこのときの体格は今とほとんど変わらない。
中学チャンピオンになれたのは、体の成長が人よりも早くピークが来たためだと気がついたのが、高校進学後。徐々にライバルや後輩に追いつかれていった。そこで100m、200mといった短距離へのこだわりを捨て、400mハードルに転向したのである。「ハードルを選んだのは前向きな気持ちではなく、そうしなければ生き延びられなかったから」と振り返る。
為末は高校時代に経験したスランプのときに、指導法の書籍を100冊以上読破した。その後、大学やプロ時代には、陸上に限らず、政治・経済、投資などのほか武士道に関連する書籍を読みあさった。関心を持った分野はとことん研究し尽くす。
自らの弱みと強みを客観的に分析して、手を打つのも為末流だ。為末には豊富な海外経験があるが、ビジネスの起点はあくまで日本と考えている。「いろんなシミュレーションをしたが、海外に出て行くとしても日本で何らかのポジションを確立してからのほうが現実的」と為末は見る。たとえば、米国には陸上のメダリストがゴマンといる。日本人初メダリストの肩書きが通用する日本を取っ掛かりにしたほうが、成果は出しやすい。
現役時代の終盤は、自らの体で理論を「実験」し、実践していった。
「今度は1人の体ではなく、組織を相手にした本当のマネジメントが始まる。何でも勝てるわけではないが、陸上以外で勝てるものが、どこかにある。次はそれを選びたい。この1年ぐらいで(方向性を)絞っていきたい」。
経営のリーダーを目指す「侍ハードラー」の全力疾走が続いている。=敬称略=
(撮影:今井康一)
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