「原発のテロ対策」は、驚くほど整っていない チェルノブイリ30周年で考えるお寒い現実
もちろん、仕組まれたものであれ偶発的な事故であれ、チェルノブイリや福島の二の舞を避けられるのであれば、セキュリティ強化の代償は安いものだ。強化に向けた具体的な措置としては、訓練を受けた武装警備隊の適切な配置、重要区域への物理的障壁の設置、探知・警報・連絡システムの整備、テロリストらの潜入阻止を目的とした全従業員の注意深い審査などが挙げられる。
だが、残念ながら、慣性を考えると、私たちが行動を起こすためには、意図的なチェルノブイリの発生を待たねばならないかもしれない。核関連の批評家たちは何十年にもわたり原子炉がテロの標的になる可能性があると危惧してきたが、原子炉の防衛が決して十分に行われてはこなかったことを考えてみてほしい。
批評家らは、テロリストが、高機能の携帯型武器、携行式ロケット弾、自動車爆弾を使用したり、水辺または空から攻撃を行うことで原発の格納構造を破壊できると主張した。また、原発の重要なライフラインに対する内部からの妨害破壊工作により、炉心から致命的な放射能含有物が放出される可能性についても警鐘を鳴らした。
しかし、これまで本格的な攻撃を受けたことがなかったため、 すっかり油断していたのだ。ベルギーは、昨年のパリのテロ攻撃を受けてようやく、武装警備隊を国内の原発に配備した。原発を有するほかの30ヶ国のうち、ベルギーと同様に悠長に構えていた国家はいくつあるだろうか?
事が起きないと考え方は変わらない
そして、うぬぼれが露呈して恥ずかしい事態となっている。2012年に、スウェーデンの核施設に侵入したグリーンピースの活動家たちは2基の原子炉を取り囲むフェンスを剥がし、グループ内の4人が片方の原子炉の屋根の上で一晩中身を隠しとおした。2014年には、グリーンピースの別の活動家グループがドイツとの国境に近いフランスの原発に侵入し、原子炉建屋に大きな横断幕を掲げた。
これらの大胆な行為は、スウェーデンとフランスの両国、そしてひょっとするとほかの多くの国々において、発電所の警備体制に何らかの重大な問題があることを示している。
国際原子力機関(IAEA)、世界原子力発電事業者協会(WANO)、そして欧州連合(EU)はいずれもガイドラインを定め、原子炉の警備と安全を強く求めている。これらの機関は、受け入れ国側の要求に応じて調査チームを派遣し、施設の警備を評価している。しかし、各国の警備体制を変えるよう強制することまではできない。