日本人が語らない「お金を稼ぐことは健康的」 出口氏と同性婚カップルが語る「現実」
出口治明(以下、出口):ありがとうございます。
東:日本ではどうしてもおカネの話をすると、汚いとか下品とか、そういう風になってしまう。私は、おカネの話をしてはいけないという風潮が、若い人を生きづらくしていると思うんです。おカネを稼ぐことは健康なことだよと、若い人にも知ってもらわないと。
特に女性は、「自分の給料を上げてください」ってなかなか言えないです。フリーランスで働く人も、「自分はこれだけ働くから、これだけ下さい」ってことを言えなくなってしまいがちですから。これって本当に、誰にとってもいいことではないですよね。
出口:絶対にそうですね。
東:おカネのことを言うのは、はばかられるっていう感覚はみんなあると思います。でもそこは越えていってほしい。特に今の若い人たちは、自分でしっかり「おカネがほしい」と言えないといけないと思っていました。そういう意味でこの本はすばらしいと思います。
出口:いやあ……もうしばらくは、こんなに褒められることはきっとないですね(笑)。
保険の本質とは
出口:僕はお二人の新著『同性婚のリアル』を読む前に、『ルポ 同性カップルの子どもたち』(杉山麻里子著)という本を読んでいました。その本の中には、同性カップルが子どもを持つ方法として「異性のパートナーとの子どもを引きとって自分たちが育てる」「養子や里子を迎える」「人工授精や体外受精」「代理出産」の4つがあると書いてありました。でも、よく考えてみたら、これは同性カップルだけの話ではなくて、たとえば不妊の異性婚にも起こる問題です。だから、子どもの持ち方は普遍的な問題であって、同性カップルに限った話ではないと思いました。
増原:おっしゃるとおりです。私たちは、レズビアンカップルという視点から物事を発信していますが、ほかの人たちの抱える課題にも、実はすごく密接にかかわっています。私たちは、いわゆる生物的な不妊ではなくて、「社会的」に不妊の状態です。たとえば、婚姻関係がなければ、男女の不妊カップルも日本では生殖補助医療を受けるのにハードルがあります。だからLGBTのことをマイノリティの課題としてとらえるよりも、社会全体のマジョリティ側の課題でもあると認識することが重要だと思います。
出口:そうですね。ライフネット生命が取り扱っている生命保険という商品も、本来は困っている人のためのものですので、同性・異性にこだわる必要はないと思っています。だから2年ほどかけて検討して、同性のパートナーも死亡保険の受取人になっていただけるようにしました。お二人の立場からして、LGBTの方々のために保険で何かもっとできることがあれば、教えていただけけるとありがたいです。