波紋を呼ぶ「少数派」しか世界を変えられない 出口氏と同性婚カップルが語る「真実」
出口:お二人の提案はもっともです。ただ、人間は考えることができる動物なので、ファクト(事実)を知ることができれば理解が進むはずです。
たとえば、おカネの話で、面白いジョークがあります。あるファイナンシャルプランナーの方とお話をしていたときに、70代のお金持ちのおばあさんが相談に来られたと。そのファイナンシャルプランナーが「今日はどのようなご相談ですか」と尋ねたら、おばあさんは「いろいろな証券会社に勧められて困っているんだけれど、ブラジル債とレアル債、どちらにすればいいですか」とおっしゃったそうです。「ブラジル債とレアル債は同じものですよ」とおばあさんにお伝えしたら、「えっ、私、違うものだと思っていた」とびっくりされたと。これは、象徴的なエピソードだと思うのです。知っていればそんなことにはならない。知ることはものすごく大事なことですね。
増原:今のジョークはとても面白いですね。おカネはあったのに、その方にはリテラシーがなかった。
出口:『働く君に伝えたい「お金」の教養』を書いたときに、レオス・キャピタルワークスの代表取締役社長・藤野英人さんがツイッターで「この本に書いてあることは世界では中学生でも知っているごく当たり前のこと。でも日本の大人はほとんど知らない」という趣旨のツイートしてくださったのですが、そのとおりかもしれません。
G7でパートナーシップをとっていないのは日本だけ
出口:もうじきサミットが開催されますが、たしか、G7で同性パートナーシップの法的保障が制度化されていないのは日本だけですね。ほかの国は、3カ国が同性婚や同性パートナーシップ法がすでに整備されていて、3カ国がパートナーシップを認めています。
増原:ちなみにロシアでは、同性愛プロパガンダ禁止法があり、国際社会から非難されています。
出口:その意味では、日本は先進国から見て30年くらい遅れていると思います。同性婚やパートナーシップ法をG7の中で認めていないのは日本だけ、というファクトを知ることも、ものすごく大切なことだと思いますね。知らなければ、それだけ偏見も増幅されていきますから。
増原:本当におっしゃるとおりです。国レベルではまだですが、渋谷区や世田谷区の同性パートナーシップ制度はそんな状況に風穴を開けました。
出口:僕は、最近メディアの人とお会いする度に、こうお願いしています。「どのような記事でも、記事の最後にG7もしくはOECDではこうなっているというデータを付加してください」と。記事の最後に日本と世界を比較したデータを載せれば、書く側にとっても本当にこんなことを書いていいのかというチェック機能も働きますし、読者の理解も進むと思うのです。