ディズニーアニメが続々ヒットを飛ばす理由 「ズートピア」には伝統と変革の融合があった

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ディズニーのお家芸「話す動物」に、現代風のアレンジを採り入れる ©2016 Disney. All Rights Reserved.

バイロン監督は「ディズニーには歴史があるわけだから、その伝統は大切にしなければいけない」と語る一方、現代的な要素を取り入れて進化させる必要性を力説する。「描かれているものは動物の世界の物語ではあるけれども、現代の観客が、自己投影できるような物語でなければならない。例えば『塔の上のラプンツェル』なんかは数百年前の時代設定で、ある意味時代劇だが、現代的な要素は取り入れられていたからね」と、一手間かけた作品作りが、観客の心をつかむことに成功したと言える。

ピクサー流の「ワイガヤ」で成果

ディズニーは2006年にCGアニメーションスタジオのピクサー・アニメーション・スタジオを買収。その結果、『トイ・ストーリー』『カーズ』などの監督で知られるジョン・ラセターが、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオのチーフクリエイティブ・オフィサーに就任した。

『ズートピア』では製作総指揮を務めるラセターはふたりの監督に「誰も観たことのない動物映画を作る必要がある」と告げたという。同作品のプロデューサーであるクラーク・スペンサーは「ジョンが来て変わったことが2つある。『ディズニーのアニメーターであることに自信を持て』と意識改革をしたこと。そして、スタジオの中にあった壁を崩したということ。それまでは、自分の関わっている作品だけ考えていたクリエーターたちが、仲間の作品にも気を配るようになり、皆で意見交換をするようになった」と振り返る。

それぞれのクリエーターたちが意見を戦わせながら、試行錯誤を繰り返すことで、より良いストーリーに練り上げていくというジョン・ラセターの流儀は、クリエーターの間で深く浸透しており、素晴らしい成果をあげているのは周知の通りである。

「もちろん人間なので、自分が気に入っているアイデアが否定されることもある。でもその過程が試行錯誤であり、失敗を恐れないことに繋がる。クリエーター集団が家族のように手を取り、分かち合いながら話をしていくと、やはり最善のアイデアが勝つ。それは必ずしも自分のアイデアでなくてもいい」とバイロンは語る。つまり、チーム・ディズニーとして最高に面白い作品が誕生すればいいという考え方だ。

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