創造性にとって「インテリ気取り」は拘束具だ 先入観を持つと本当の価値がみえなくなる
ジェフ・クーンズの彫刻作品に悪戯している男がいるのを見かけた。場所はニューヨーク、夜も更けた頃だった。男は外科医が着るようなスモックを羽織り、蛍光オレンジの工事用ヘルメットを被っていた。熱に浮かされたような、憑かれたような、ぎくしゃくした身のこなしだった。今思うにやめておけばよかったのだが、お節介なことに、私はこの男をやめさせることにした。
クーンズのキッチュで悪趣味な彫刻
そのクーンズ作品は、花で作られた巨大なウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアの《パピー》だった。花と子犬という感傷的なツボをつく要素を組み合わせたのが、《パピー》という作品だった。このド派手な化け物犬を指してクーンズは「愛と温かさと幸せ」の象徴であると言った。天を突くような《パピー》は12メートルを超えた。鋼鉄の骨組みを23トンの土が覆い、ペチュニア、ベゴニア、キクといった7万にのぼる赤、オレンジ、ピンクの花たちが、その上に並んでいた。その晩、《パピー》はまだ完成していなかった。作業員たちは作業途中で帰宅したが、現場に見張りを残さなかったのだ。近づくと、憑かれたように植物を移動させる男の逆上したような目つきが見えた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら