創造性にとって「インテリ気取り」は拘束具だ 先入観を持つと本当の価値がみえなくなる
1982年、クレイグ・グッドは社会に見過ごされていた。いくつもの職を転々とし、その時点では無職だった。ピクサー社の管理部門で清掃と警備の空きがあったので応募した。トイレ掃除が主な仕事だった。グッドはこう言っている。「会社のことを知りたかったら、清掃をやればいろいろ
見えてきますよ」。当時はまだルーカスフィルムの一部門だったピクサーは、終業時間後に従業員相手にプログラムの講習会を開いていた。グッドは講習を受け、やがてコンピュータ部門に昇格した。
グッドは最終的にピクサーのレイアウト・アーティストになり、その仕事を30年も続けながら、『トイストーリー』、『ファインディング・ニモ』、『モンスターズ・インク』といった作品で名を上げた。ピクサーという会社は、従業員の肩書きや職種ではなくて、従業員の可能性を重視する。グッドはその生き証人なのだ。
創造性の強い職場を創り上げるピクサーの企業文化
「ピクサーがピクサーたり得る個性というのがあって、それはとても重要でしかも稀な資質なのです。つまり、どんな人でも誰でも貢献できると
いうことを受け入れるのが、ピクサーの企業文化なんです」と言ったのは、ピクサーの副社長パム・カーウィンだった。
ピクサーでは、従業員向けに何度も制作中の作品の試写が行われ、誰からの意見も歓迎される。誰もが自分の価値を認められていると感じることができる。創造性の強い職場を創り上げるためには、そこにいる人が自分の考えを気軽に表せることが重要なのだ。
ピクサーの従業員の中には、独立して自分のスタジオを構えた者が大勢いる。それぞれがピクサーの企業文化を広めながら、革新的な新製品を生み出し、活動的な制作チームを作り出している。中には製造業やサービス産業、卸売等、デザインやアート系ではない分野に進んだ者もおり、クリエイティブな思考はどんな職種にも役に立つということを証明している。
クリエイティブな思考を持つ人は、普通の人ならどうしても影響されてしまうような価値判断に、縛られることがない。みんなが無価値だと言うなら無価値に違いないというような先入観を、この人たちは持っていないのだ。どんなものでもその本当の姿を見据え、本当の価値を測ることができるのである。
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