ディズニーアニメが続々ヒットを飛ばす理由 「ズートピア」には伝統と変革の融合があった

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ムーア監督も「そこにエゴはない」とキッパリと言い切る。「そこでエゴが勝るようになったら、その時点で間違っているというか、まずいと思う。監督は毎日、何百、何千という課題と向き合っているが、すべて正しい答えを持っているなんてことはあり得ない」。

来日して『ズートピア』の見所を語るバイロン・ハワード監督(左)と、リッチー・ムーア監督(右) (撮影:壬生 智裕)

ディズニーの面白さというのは、一つのスタジオの中に、ピクサーとディズニーが共存しているところだと言える。そんな両スタジオのすみ分けはどうなっているのか、というところは気になるところだ。それについてムーア監督は「ディズニーはバーバンク(カルフォルニア州)にあって、ピクサーはサンフランシスコにあるのが違いかな」と冗談で返すが、「ピクサーはこういう作風、ディズニーはこういう作風と決めているわけではないし、ライバル視しているわけでもない。一つの傘の下で最高の作品を作ろうとしている。姉妹スタジオであると考えてもらえればいい」と、協力しながら制作している体制を協調する。

現場主導だから次々にアイデアが生まれる

ジョン・ラセターとエド・キャットマルというピクサーの立役者がディズニーのトップに来たことで「フィルムメーカー主導のスタジオ」になったと、ムーア監督は変化を実感する。「制作陣や首脳陣から押しつけられるのではなく、クリエーター自らがアイデアを出していることが大きい。プリンセスを主人公にしたミュージカルをやってみたいと言えば、どちらのスタジオだろうが関係なくやろう、という機運がある。フィルムメーカーが主導型のスタジオなので、積極的にクリエーターのアイデアを取り入れる雰囲気がある。同じことの繰り返しでは、お客さんも飽きる。100年近い歴史を誇るスタジオでありながら、フレッシュな体制を保てるのがキーだと思う」と分析する。

伝統を守るために革新を積み重ねていく。ディズニー躍進の秘密はそうしたところにあるようだ。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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