『日本農業への正しい絶望法』を書いた神門善久氏(明治学院大学経済学部教授)に聞く

『日本農業への正しい絶望法』を書いた神門善久氏(明治学院大学経済学部教授)に聞く

「JA(農業協同組合)や農林水産省を悪者にしても事態は解決しない。農家、農地、消費者の惨状に正しく絶望する。そこからしか農業再生はありえない」という。

──日本の農業は、形ばかりのハリボテ化に向かっているのですか。

わかりやすい例は北海道で起こった浅漬け食中毒。死者まで出した。これは耕作技能がダメになったからその関連技術もダメになった典型例だ。有機農業だからと家畜の糞尿をむやみに使えばいいというものではない。それで、いいかげんに堆肥もどきを作り、野菜を栽培して問題を起こす。これは川下にも問題を生む。消費者はきちんと監督せよと保健所を責める。となれば保健所は殺菌指導を強める。その結果、強い化学薬品をぶち込むことになるから、ますます有機栽培の意味がなくなる。

今や日本の農家は大方がマニュアル化された技術しか持ち合わせていない。これでは品質も悪くなる一方だ。たとえば曲がったキュウリを有機で作っているから安心でうまいなどとうたう。キュウリは「樹間」がきちんと取れていれば、だいたい真っすぐになるものだ。農家の腕が落ちて根を十分に張らすことができなくなったから、曲がってしまう。

もう一つ例を挙げれば、虫食いのキャベツも、有機、無農薬の「能書き」を売りにする。もともと虫はひ弱なものにつく。しっかり育った野菜には食いつかない。一方、野菜は食べられるのを嫌い自らも虫にとって有害な物質を出す。それを「わけあり」として売りにする。そんなもの食べてもおいしいわけがない。

──有機栽培がハリボテ化の典型なのですか。

有機栽培といっているが、実際にはマニュアル依存型有機農業になっていて、品質ばかりでなく、栄養価も低い。基本の堆肥作りができていないから、それが河川や地下水の汚染にさえ結び付く。今の時期なら収穫直前の田んぼを見るといい。スズメノヒエなどといった雑草が生えまくっている。とにかく減農薬や無農薬のラベルが欲しい。それでプレミアムがつけばいいと。雑草だらけの田んぼで育ったコメはいい品質のはずがない。

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