“日の丸”電子部品の岐路 スマホ頼みの消耗戦

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アイフォーン5の量産開始は予定より数カ月も遅延。大量の発注に備え、村田は増産体制を敷いたとみられる。売り上げが立たないまま、固定費が重くのしかかった。

アイフォーン5に期待をかけた部品メーカーの多くが同様に設備を増強している。「今夏は固定費が高水準だったはず。4~9月期決算に少なからず影響があるだろう」(アナリスト)。

別の課題もある。サムスンは、村田に大量発注をしつつも、部品の内製比率を高めようとしている。村田を含めた日系メーカーから技術者を引き抜き、グループ内でセラコンの生産技術を高めているのだ。

「アイフォーン5の実機を見て驚いた。部品メーカーはそうとう苦労したことだろう」(関係者)。アップルは「5」で重さ112グラムと、旧世代の「4S」から20%の軽量化を実現。高速動作を目的に新しいプロセッサーも搭載した。

高機能・軽量化にもかかわらず、アイフォーン「4S」と「5」で、アップルの部品調達費は1台当たり10ドルしか変わっていない(IHSアイサプライ調べ、下表)。付加価値の高い部品が値上がりした分、その他の汎用部品の価格は徹底的に抑えられた。周辺部品では“アップル基準”を満たした台湾や中国の新興メーカーが台頭し始めている。

部品メーカーはジレンマに悩まされている。アップルやサムスンの要求する水準を満たす付加価値の高い部品を開発し、大量の発注に素早く応えなければ、足をすくわれる。一方で、スマホへの依存度が高まるほど、顧客の生産動向で業績が大きく振れる。「自動車など他分野での売り上げ拡大も急ぎたい」(村田製作所幹部)と、リスク分散を図る動きも目立ってきた。

技術を磨きつつ、経営資源をどう振り分けるか。従来以上に難しく、スピーディな経営判断が求められている。

村田製作所の業績予想、会社概要はこちら

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(本誌:前野裕香 =週刊東洋経済2012年10月20日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

 

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