ひとつの方向があるから、はじめて個性が発揮できる。会社でいえばそれが経営方針であり、基本理念であり、ということになる。会社に経営理念があって、それがビシッと一本、社員の中に通っていればこそ、はじめてみんなそれぞれに個性を発揮できる余地が生まれてくるのである。
「きみ、ええか。物事は、右か左かどちらかひとつで考えたらあかんで。なんでもそうやけど、たいがい相矛盾する考え方があって、たいていの人はそのいずれかひとつの考え方で判断しようとする。けど、それは基本的にはよくないことや」
たとえば社会というものを考えても、全体がなによりも大事だとする考え方と、個人が大事だという考え方と、ふたつある。しかし全体のために個人が犠牲になるとすれば、それはなんのための全体か。個人が犠牲になるような全体ならば、作らないほうがいい。
かといって全体はどうなっても、個人さえ大事にされればいいのだとするなら、その個人はいったいどこに立っているのか。自分が立っている踏み台が壊れてもかまわないというのは愚かな考えである。
個人も社会も繁栄するには?
自分も活き、全体も活きる。個人も繁栄するが、社会も繁栄する…そうなる方法を考えるのが知恵ある人間というものである。
「まあ、人間はひとつだけの物差しを使って考えたほうが容易であるから、どうしてもそうなるわな。二本の、あるいは三本の、ということになれば、複雑になるから、なるべく一本の物差しで明快に考えようとする。
しかし、わしの経験からして、物事そんな簡単なものではないよ。だからたいていの場合、やり方を間違える。基本方針と個性というものは、見方によれば相反する考え方といえるが、そのいずれも否定すべきもんじゃないわな。その両方を生かし活用するところに、会社というか組織が発展する秘訣があるんや」
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