シャープ、鴻海に手玉に取られた買収劇 出資1000億円減少でも液晶事業に賭ける

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郭董事長はディスプレー事業の条項に関し、明確な説明を避けた(撮影:ヒラオカスタジオ)

その条項とは、「シャープの事情で契約が終了した場合や、鴻海に責任がない事情が原因で今年10月5日までに出資が実行されない場合、シャープは鴻海にディスプレー事業を購入する権利を与える」、というもの。破談になっても、鴻海側に責任がなければ、鴻海はディスプレー事業だけを買収できる。シャープのさらなる業績悪化や株価下落を名目に、鴻海が出資を見送り、ディスプレー事業のみを手に入れ、他事業を切り離すシナリオもありうる。

会見で郭董事長は、この条項に関しては”万が一”の場合を想定していると語るのみで、明確な説明を避けた。 

契約上、鴻海からの出資の払込期間は、6月28日から10月5日。6月23日に予定されるシャープの株主総会後だ。総会では、シャープの取締役のうち3分の2の人数まで、鴻海側の指名で選ばれるとみられる。鴻海が主導権を握る新たな経営陣の下、仮に出資を見送っても、シャープ取締役会が鴻海の意に反する決定を下せるのか、わからない。

出資実現に不安が残るものの、シャープはすでに得た1000億円で、これまで資金がないために遅れていたディスプレーの先端技術への投資を加速させるなど、再建に向けて動き出した。

赤字覚悟で液晶で挽回期す

4月6日には、堺ディスプレイプロダクト(旧シャープ堺工場、SDP)会長の野村勝明氏と同社長の桶谷大亥氏が、シャープの副社長と常務にそれぞれ就任。高橋社長より1年遅れで入社した野村氏は、液晶事業のキャリアが長く、2012年にSDP会長に就任すると、赤字だった同社の立て直しに成功した。その功績と実力を鴻海に買われ、今度はシャープ本体の液晶事業改革に着手する見込みだ。

ただ、「ディスプレーに関しては大規模な設備投資や研究開発費を計画しているため、再び償却費などが増える中で収益改善を図ることになり、容易ではない」と、みずほ証券の中根康夫アナリストは指摘する。

今後の計画について郭董事長は、「シャープの黒字化には2年、保守的に見て4年要する」と見通した。当面の赤字は覚悟のようだが、「厳しさを持たなければベストにはなれない」と、言い切る郭董事長の忍耐がはたしてどこまで続くのか。業績が思うように浮上しなければ、より抜本的な改革に迫られて、今は原則維持するとしている従業員の雇用も、揺らいでくる可能性がある。

買収決定でも予断を許さないシャープ。再建に向けた道のりはまだ長く険しい。 

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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