シャープ、鴻海に手玉に取られた買収劇 出資1000億円減少でも液晶事業に賭ける
「鴻海が100年企業になる方法を(シャープから)学ばせてもらう」。鴻海精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長は、シャープ買収について、殊勝にもこう語った。
4月2日、シャープと台湾のEMS(電子機器受託製造サービス)最大手・鴻海は、大阪・堺で共同会見を開き、シャープの鴻海傘下入りを発表した。2月末、シャープが鴻海向けに第三者割当増資を実施し、4890億円調達することをいったんは決定。が、直後に鴻海はシャープの抱える3000億円規模の偶発債務の存在を知り、最終合意を先延ばししていた。
その後1カ月の交渉で、鴻海はシャープと主力銀行に対し、出資条件見直しを要請。最終的に出資額は約1000億円減り3888億円となった。当初盛り込まれていた、主力行の持つ優先株の半分を1000億円で買い取ることも、見送られたのである。
前期は債務超過寸前の水準か
鴻海は好条件で契約を結ぶのに成功した一方、シャープにとっては、受け取るキャッシュが減ることで投資余力も目減りし、復活への青写真は当初より描きづらくなった。 追い打ちをかけるように、シャープの業績は悪化の一途をたどっている。2016年3月期は、液晶パネル事業の価格下落や販売不振が原因で、下方修正を発表。1700億円の営業赤字に転落する見込みとなり、債務超過寸前まで自己資本が毀損する。3月末が支払期限だった5100億円のシンジケートローンは、銀行が契約延長に応じたため、最悪のシナリオである経営破綻は免れたものの、綱渡り状態は続く。
共同会見では、鴻海の郭董事長とシャープの高橋興三社長が肩を抱き合い笑みを交わすなど、両社の関係が良好である様子がしばしばうかがえた。しかし、これで万事解決、とはならない可能性も残る。出資が本当に実行されるのか、疑問符が付いているからだ。
契約に当たり、鴻海からの出資を確実に実現させるために、シャープは1000億円の前払い金を要求。3月31日に実際に支払われた。が、契約内容には、出資が実行されなかった場合の条項が新たに付け加えられており、真意に関して憶測を呼んでいる。
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