「いい会社」への投資で考える資本主義の姿 鎌倉投信はなぜ投資家に支持されるのか
鎌田:長期で株式を保有することによって、AA型種類株式を発行したトヨタ自動車は利益還元という点で投資家に貢献し、投資家は長期的な視点でトヨタ自動車の経営を支えるという点で双方にとってプラスであり、資本市場に一石を投じたと考えます。投資には、こうしたお互いの信頼関係がとても大切だと思います。
最近注目を集めているスチュワードシップコードは、機関投資家が投資先企業の経営をモニタリングし、場合によっては議決権を行使することなどを通じて企業価値の向上に寄与するかのように言われています。しかし、機関投資家はその企業の株式をいつでも売却できますので、機関投資家と企業の関係は決してフェアなものではありませんし、そこには真の信頼感も芽生えないでしょう。
しかしながら、トヨタ自動車は投資家とのより長い信頼関係を築くことを前提としたAA型種類株式の発行を決断しました。これは評価してもよいのではないでしょうか。
大久保:私が「これはおかしい」と強く思うのが、四半期決算です。たとえば、四半期決算のうち、第1四半期は仕込みの時期だから売り上げが下がることも多い。そこから徐々に売り上げや利益が付いてくるようになり、第4四半期はこれまでの努力が実って業績が大きく花開く。そういう段階を無視して、四半期ごとに業績をチェックして一喜一憂するのは合点がいきません。本当に四半期決算は必要なのでしょうか。あるいは、ストックオプションや自社株買い、減損会計は、会社経営にとってメリットのあるものなのでしょうか。私は正直、これらはすべて廃止してしまってもよいと思うのですが、どう思われますか。
おかしいと思うならはっきり言うことが肝心
鎌田:たとえばストックオプションについていえば、日本はまだ自制が効いていると思います。米国などはそこが極端で、株価の上昇を目的とした経営手法によって経営者が巨額の報酬を得る実態を見ると、そうした制度が本当に会社のためになっているのか疑問に思う点が多々あるのは事実です。
そして、日本の企業にも同様の傾向(短期的な株価の上昇を促す経営)があります。日本の投資家の多くも「株式価値」を高めることを投資の目的にしていますが、企業の持続的な発展のためには、バランスのとれた付加価値の分配を促すことが大切です。経営者も、投資家の顔色をうかがいながら、四半期ごとの数値を無理してつくるのではなく、投資家の主張がおかしいと思うなら、経営者が自ら「それはこういう理由でおかしいから、うちは導入しない。幅広くステークホルダーを大事にするのが当社の経営方針である」と、はっきり言うことが肝心です。
大久保:極端な例ですが、たとえばA社は100人を採用し、B社は100人をリストラして同じ利益を計上した場合、どちらの会社が優れた経営をしたのかは一目瞭然です。ただ、マーケットでは往々にして、表に出てきた利益だけを見て投資判断を下す傾向があります。同じ利益でも、それを実現する道筋の違いというものをもっと重視するべきではないでしょうか。
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