「いい会社」への投資で考える資本主義の姿 鎌倉投信はなぜ投資家に支持されるのか

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鎌田:そうですね。確かに大変ですが、地域で頑張っている「いい会社」に直接足を運んで調べると、安定的に企業価値を高めている会社が少なくないことがわかります。財務上の評価も大切ですが、鎌倉投信は、そうした会社の社会的な存在価値をしっかり見定めるように努力しています。株式投資は、ともすれば年20%、30%という高成長が期待される会社に投資しようとしますが、鎌倉投信の理念は「年輪投資」とでも言うべきもので、地域とつながり、社員の幸せを大切にしながらも、(現在の株価の期待収益率に換算すれば)年5%くらいの成長を長期的、かつ安定的に持続している会社に投資します。

評価すべきトヨタの新型株式

大久保 秀夫(おおくぼ ひでお)/株式会社フォーバル代表取締役会長。1954年東京都生まれ。国内、外資のふたつの会社を経て、25歳で新日本工販株式会社(現・株式会社フォーバル/東証一部上場)を設立。1988年、当時、日本最短記録で現・ジャスダックに株式を公開。同年、社団法人ニュービジネス協議会「第1回アント レプレナー大賞」を受賞。東京商工会議所特別顧問、公益財団法人CIESF(シーセフ)理事長、一般社団法人公益資本主義推進協議会(PICC)代表理事。「『社長力』を高める8つの法則」(実業之日本社)など著書多数

大久保:年金運用の世界は、短期の運用成績で評価する傾向が強まっていますが、鎌倉投信の受益者は、リターンの実現についてどう考えているのですか。やはり短期で高いリターンを望んでいるのでしょうか。

鎌田:鎌倉投信の受益者は、30代、40代の人が全体のおおむね3分の2を占めます。こういう人たちは老後に備えた資産運用の一環として、鎌倉投信のファンドを選んでくださっていると思うのですが、彼らがリタイヤするまでには、まだ結構時間の余裕があります。だから、マーケットが荒れた時も、慌てて解約を申し出てくるようなことはあまりありません。

それに、社会をよくするための投資という点に共感してくださっている受益者が多く、そういう人は長期で投資したいと考えていますから、なおのこと目先のリターンを気にすることなく保有しています。年金基金などの法人投資家は、どうしても決算という時間の区切りに制約を受けますが、個人投資家にはその概念がありません。運用者として長期投資を指向している鎌倉投信と時間軸の共有ができていますし、何よりも積立投資をしているお客様が多く、長くお付き合いいただいています。

大久保:トヨタ自動車が昨年、AA型種類株式を発行しました。これは長期で保有するほど配当利回りが上昇し、かつ発行価格でトヨタ自動車が買い取ってくれるという、特殊なスキームを持った株式ですが、長期投資家を育てるという点で意味のあるものだと考えています。もちろん、一方では批判的な意見も聞きますが、鎌田さん自身はAA型種類株式についてどう考えていますか。

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