「いい会社」への投資で考える資本主義の姿 鎌倉投信はなぜ投資家に支持されるのか

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鎌田:そのとおりだと思います。たとえば今、日本の人口が減少局面に入るなか、労働力の低下を懸念する声もありますが、なかには障害者を雇用してしっかり売り上げ、利益を上げている会社もあります。人口減少と労働人口の減少は別の問題です。人財の多様性(ダイバーシティ)が話題になっていますが、雇用が難しいと言われる障害者の働く場を作り、そこで働いてもらい、かつ、会社としてしっかり売り上げや利益を確保している会社は、もっと高く評価されてもよいと思いますね。

大久保:投資している会社の株式を売却することはあるのですか。

鎌田:「結い2101」では、投資先企業の経営方針が大きく変わらない限り、保有銘柄を全部売却することはありません。マーケットの状況次第で、リスクを管理するため調整売買はしていますが、一定比率は残します。

投資で公益資本主義を実現

大久保:「結い2101」は、今治タオルで話題となっているIKEUCHI ORGANICに投資していますね。一度、倒産した会社なのに、なぜ投資に踏み切ったのですか。

鎌田:「結い2101」が投資するのは基本的に上場企業の株式が中心ですが、一部非上場企業にも社債で投資しています。その代表的な会社が、IKEUCHI ORGANICです。この会社は当初、他社ブランド製品の製造を請け負うOEMをメインにしていたのですが、取引先の問屋さんが倒産して、連鎖破たんしてしまいました。その後、自社ブランドを立ち上げ、環境や安全性に配慮したタオルを生み出していきました。

その姿勢に対して、鎌倉投信のファンドマネジャーが興味を持ち、本社がある今治市で開催されていた子供向けのタオルで折り紙をするイベントに参加したのです。親子連れの中に大人がひとりだけ混じっていたので、さぞかし目立ったのでしょう。池内社長が声を掛けて下さったので、「実は御社の取組みに関心を持っているのです」と申し上げたら、会社の経営理念やこれからのビジョンなどについて熱心に話をしてくれたそうです。それで社長や同社の環境に対する意識の高さ、商品開発力などに共感し、投資を決定しました。

大久保:ROE経営など、欧米型資本主義の投資基準が日本にもどんどん入ってきていますが、鎌田さんはそういうものは一切関係ないというスタンスを貫いていらっしゃいますね。鎌倉投信の成功は、公益資本主義の正しさを裏付けるとともに、その実現に向けた確かな軌跡となります。今後も頑張ってください。

大久保 秀夫 フォーバル会長

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おおくぼ ひでお / Hideo Okubo

フォーバル株式会社代表取締役会長。1954年東京都生まれ。国内、外資のふたつの会社を経て、25歳で新日本工販株式会社(現・株式会社フォーバル/東証一部上場)を設立。1988年、当時、日本最短記録で現・ジャスダックに株式を公開。同年、社団法人ニュービジネス協議会「第1回アントレプレナー大賞」を受賞。東京商工会議所特別顧問、公益財団法人CIESF(シーセフ)理事長、一般社団法人公益資本主義推進協議会(PICC)代表理事。「『社長力』を高める8つの法則」(実業之日本社)など著書多数。

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