「いい会社」への投資で考える資本主義の姿 鎌倉投信はなぜ投資家に支持されるのか
大久保:その頃から鎌倉投信のアイデアはあったのですか。
鎌田:それがまったく考えていませんでした。何か草の根的な社会貢献活動ができないかとは考えていましたが、すでに43歳で畑違いのことをやるのは難しい。ただ、社会をよくしようと活動しているさまざまな人たちに会い、話を聞いているうちに、彼らが発展するうえで欠けているもののひとつが、実は金融の枠組みであることに気づいたのです。ひょっとしたら、そこに自分の役割があるのかもしれない。そんな思いで、今の鎌倉投信の設立メンバー3人に声をかけ、半年くらい、何ができるのかを話し合いました。
わざわざ運用会社を設立する意味
大久保:自分たちだからできる金融の形を追求しようと思ったのですね。
鎌田:そうです。4人で、わざわざ運用会社を設立する意味は何なのか、ということを徹底的に話し合いました。社会に役立つ金融の形とは何か。それは、鎌倉投信の経営理念「3つの『わ』(和・話・輪)を育む“場”をつくる」、すなわち繋がりをつくることではないかという結論に達したのです。
そして、おカネを通じて、人と人、価値と価値を繋いでいく金融を具現化するために、少額から不特定多数の人が参加できる公募の投資信託を直販で販売するという事業をやろうとなったのです。金融は、ともすればすべて数字に置き換えられてしまう世界ですが、そのなかで本当に人々を幸せにする金融の形はあるのか、ということを自問自答しました。
大久保:鎌倉投信の「結い2101」は、「いい会社」を発掘して投資をしていますが、「いい会社」の条件とは何だと考えているのですか。
鎌田:一言でいえば、「本業を通じて社会に貢献する会社」です。そういう会社は、社員が働くことに喜びを感じています。逆に、社員をリストラしたり、取引先が苦労したりするなど、何かの犠牲のうえに乗って成長しているような会社はいい会社とは言えないでしょう。日本をはじめとする先進国は、モノやサービスが一通り行き渡った状態にあります。ただ、一方でさまざまな社会問題も抱えています。ですので、本業の中に、経済の量的拡大よりもむしろ、社会問題を解決しながら社会の質的発展を促す成長モデルを持つ会社が理想的ですね。
大久保:この対談の2回目に、伊那食品工業の塚越寛会長にお話をうかがったのですが、地方に行くと非常に「いい会社」がたくさんあります。とはいえ、それを発掘するための労力は相当なものではありませんか。
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