ユニクロの「EC強化」がもたらす意外な波紋

その売り上げは一体どこで上がったものか

インターネット、スマホなどIT化の進展に伴ってあらゆる業界同士の垣根が下がり、デジタル化への対応が多くの企業の重要な課題になっていることはもはや言うまでもありません。いかに国内のアパレル市場で強固な地位を獲得しているユニクロといえども、リアル店舗の販売に頼っていてはこの先の激しい競争には勝ち残っていけません。

だからこそのECの拡大なのです。サイズやカラーの欠品による販売機会損失をできるだけ無くしていく、などという利点も見込めます。なにかとかさばる洋服では保管する場所の費用もバカになりません。

そのECへの本気の取り組みの端緒が、セミオーダージャケットだと筆者には見えます。これを目当てに店頭に来た顧客はユニクロオンラインストアの存在を知り、店頭在庫になくてもECで自分に合った商品を購入できる。たとえば発注履歴や店頭での採寸などから、自分の体型を改めて把握できるので、セミオーダージャケット以外の商品についてもECで購入するハードルが下がるという流れにつながることも考えられます。

リアル店舗はEC拡大のためのショールームに?

そしてECにおいての決済はクレジットカードや代金引換のほうが主流で、もっとも選択肢にならないのは店頭レジかもしれません。そしてユニクロがテナントオーナーに示しているように、今後、セミオーダージャケット以外の商品においてもEC販売を拡大していくとなると、ユニクロの店舗はリアルな販売とともに、自宅やコンビニでの受け取りを前提としたEC拡大のためのショールームの役割も担っていくことになるのです。

今年2月に柳井会長兼社長が「デジタルなくして未来なし」とデジタル戦略の強化宣言をしたように、ECで顧客の登録した住所や年齢、職業などのデータから、顧客情報と購入商品の紐付けを可能にし、ビッグデータを活用することで今後の商品開発や大量の生産をより効率的に行うことを目指していくようです。

そうなると、これまで売上歩合賃料を得てきたテナントオーナーへの影響は避けられません。売り上げが上がらない場合の契約条件が多少見直される可能性はあっても、店舗自体が明確に売り上げを上げない限りは、売上歩合賃料が低下する方向に行くと予想するのが自然でしょう。

もちろん、ユニクロが思惑通りにEC販売を拡大できるという保証はありません。とはいえ、アマゾン・ジャパンの売上高が約1兆円に到達したことやヨドバシカメラのネット部門が急成長していることなどが象徴するように、今や日本人がネットを使って買い物をすることへの抵抗はどんどん下がっています。

品質や機能、品ぞろえ、価格などの面でユニクロに親しみを持った顧客が、今後、どんどん便利になるユニクロオンラインストアでの買い物を増やしていく流れは十分ありえます。ユニクロは言わずもがなの国内アパレル最大手。程度の大小はあっても、テナント入居している企業のリアル店舗がECの発展によってショールーム化していく流れが加速すると、売上歩合賃料という不動産の風習そのものの存在価値が議論される場面も考えられます。今回、ユニクロがテナントオーナーに投げた石は、思わぬ大きさの衝撃をもたらすかもしれないのです。

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