ユニクロの「EC強化」がもたらす意外な波紋 その売り上げは一体どこで上がったものか
今回、ユニクロがテナントオーナーにお願いとしたセミオーダージャケットの店舗売り上げのとらえ方は、文書に明記こそしていないものの、「顧客がみずからの意思で店頭レジではなく、クレジットカードや代金引換、ユニクロオンラインギフトカードでの決済を選んだ場合には店舗の売上高としてはオーナーには報告しません」と暗に意味していると解釈できます。
さらに同文書には、今後は今回と同様の運用で商品種類を拡大する可能性があることや、今回の取り組みによる売り上げの推移を一定期間見たうえで、あらためて売り上げに対する賃料条件の取り扱いを協議したいなどということも書かれています。
異業種との連携によって着々と準備
これはユニクロを店子に持つオーナーにとって小さくない意味を持ちます。ポイントはユニクロが今後、本気でEC経由の売り上げを拡大しようと動いていることです。
話は約半年前にさかのぼります。2015年10月8日に開いた前年度(2015年8月期)の決算説明会でファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、前年度のグループ売上高(約1兆6800億円)の5%程度を占めるECの構成比を、「将来的には30~50%まで拡大していきたい」と明言しました。柳井会長兼社長はこのとき、「早ければ3~5年ぐらいで実現したい」という趣旨の発言をしたと複数のメディアが伝えています。
そのための準備は異業種との連携によって着々と整えてきています。肝になるのはITと物流。ITの分野ではデジタル分野で世界最大級のコンサルであるアクセンチュアとタッグを組んで、企画・生産・販売・物流が同時に稼働する新しいシステムを立ち上げるとともに、IT人材の採用・育成を強化。物流については大和ハウス工業と一緒に次世代物流の仕組みを国内数カ所で構築しています。
新しい物流の仕組みが動き出すのは早ければ今月。第1弾として東京・有明で建設が進んできた専用物流拠点が稼働する見込みです。特に東京都内のEC利用者へは即日配送が可能となる見込みで、配送時間を短くしてコスト削減にもつなげるとともに、都内近郊の店舗に対しては販売状況に応じて必要な商品が適宜届けられるような体制の構築を目指しています。
また、ECに関連してユニクロはユニクロオンラインストアで購入したユニクロ商品を、セブン-イレブンの店舗で24時間受け取れるサービスを、まずは1都3県(東京、神奈川県、千葉県、埼玉県)で4月19日から開始して、順次全国に広げるという計画も進めています。
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