渡辺すみ子
ES細胞、幹細胞などのかつては専門用語と考えられていた言葉が、再生医療への関心の高まりとともに新聞やテレビでもしばしば目にするようになった。
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「再生基礎医科学」という看板を掲げている私の研究室へも、再生医療を研究したいという学生がたくさん話しを聞きにくる。再生医療について詳しく知っている者もいるし、新聞で見た程度の者もいるが、間違いないのはこれだけたくさんの学生が再生医療に期待をもって自分もその研究の一翼をにないたい、と考えている点である。
私の職場である東京大学医科学研究所は、血液の研究、白血病などの血液病の治療に伝統と優れた実績をもつ研究所である。
私は博士課程から医科学研究所を主たる研究の場としてすごしてくる過程で、幹細胞学、臓器移植(骨髄移植)の最先端をいく血液学という学問領域にふれあい、その可能性、限界をさまざまな局面で感じながら基礎研究をすすめてきた。そしてその最先端学問の知識と技術を他臓器の再生に応用したいと考え、現在は網膜の再生発生を中心に研究を展開している。
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その間に再生医療は遠い専門家の世界ではなく身ぢかに議論される学問、医療領域となった。再生医療は突然脚光を浴びたかに見えるが、背後には発生学、がん研究など様々な学問の積み重ねがあることはいうまでもない。再生医療と幹細胞について考えながら先達の考え方を知り、今後の再生医療の進み方について皆さんとともに考えていくことができればと思う。
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