日本が「テロの標的」になる日が迫っている ブリュッセル連続テロから学ぶべきこと

✎ 1〜 ✎ 24 ✎ 25 ✎ 26 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「防御」については説明するまでもないように思われるかもしれないが、ブリュッセルの事件では、前述したように事前に情報をつかんでいても十分な対応ができていなかった恐れがある。事件発生後に多数の警官が投入されているのを見ると、当然だと思うのと同時に、後手にまわっているという印象もある。ともかく、「防御」の面でさらに改善する余地はあるはずだ。

「自覚」は、人を殺傷することがいかに罪深いかの「自覚」であり、いわゆる「聖戦」という名目で無辜の人を殺傷することの罪深さの「自覚」だ。多くの人にとって人を殺傷してはならないことは当たり前であっても、そう考えない人が出てきているのが現実である。

人が「自覚」するには何が必要か。特効薬のような便利なものはなさそうだが、イスラムの世界において若者が誤った極端な思想に走らないよう導いていくことが必要だ。イスラムの教えを正しく伝える努力はすでに多くの人々によって行われているが、さらに強化されることを期待したい。イスラム教徒の中の誤った考えを正すのは、イスラム教の指導者が行うほうが効果的だ。

テロ攻撃を受ける側に必要な「自覚」

一方、テロ攻撃を受ける側でも「自覚」を持たなければならない。とくに、貧困と差別が犯罪の温床を作り出していることについての「自覚」だ。

ヨーロッパにはブリュッセル級の都市が他にもいくつかある。多数の人を殺傷する無差別テロはこれらの都市で起こりうることについても「自覚」が必要だ。

多くの異民族が往来し、交わるのはヨーロッパの伝統であり、特徴だ。日本はこれに比べ、異民族が交わる程度ははるかに低いが、だからと言って安心することはできない。人が集まるところは多数あるし、若者が不満を持つことはヨーロッパ諸国と大して変わらない。

今年は主要国の伊勢志摩サミットが開催される。2020年にはオリンピックが開催される。テロの標的には事欠かないと見るべきだ。

美根 慶樹 平和外交研究所代表

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

みね よしき / Yoshiki Mine

1943年生まれ。東京大学卒業。外務省入省。ハーバード大学修士号(地域研究)。防衛庁国際担当参事官、在ユーゴスラビア(現在はセルビアとモンテネグロに分かれている)特命全権大使、地球環境問題担当大使、在軍縮代表部特命全権大使、アフガニスタン支援調整担当大使、日朝国交正常化交渉日本政府代表を経て、東京大学教養学部非常勤講師、早稲田大学アジア研究機構客員教授、キヤノングローバル戦略研究所特別研究員などを歴任。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事