新政権に降りかかるエコカー減税の矛盾

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ここで車重1500キログラムで区分5に属し、燃費が1リットル14キロメートルの車を考えてみよう。区分5の基準値に対する燃費の改善幅は15%未満であり、減税は適用されない。

ところが、この車にサンルーフやカーテンエアバッグといったオプションパーツをつけ、区分6に入るよう総重量を増やすとする。車重が増す分、燃費は1リットル13キロメートル台に落ちるが、区分6での同燃費は基準比25%以上となるため、75%の減税が受けられるようになる。

この盲点に目をつけたのか、オプション装備をてんこ盛りにして減税対象に仕立てた“特別仕様車”が次々と発売されている。「特定のオプションを装着すれば減税対象になる」と堂々と謳(うた)う広告も目立つ。

重い車と軽い車なら、軽いほうが燃費はよくて当然だ。絶対的なCO2排出量や、生産から廃車までライフサイクルを見通した生涯CO2排出量など、エコを測る物差しはほかにもある。減税スキームのすきを突くような販売政策がまかり通るようなら、消費者のエコカーへの純粋な期待を裏切りかねない。

新政権はいまだエコカー減税の要否について態度を明らかにしていない。業界からは継続を望む声がさらに高まりそうだが、むしろ、車に乗らない国民も含め、皆が納得できる税体系をゼロから作り直すべき時期ではないか。エコ減税を業界の“エゴ減税”にしてはならない。

(撮影:今井康一)

高橋 由里 東洋経済 記者

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たかはし ゆり / Yuri Takahashi

早稲田大学政治経済学部卒業後、東洋経済新報社に入社。自動車、航空、医薬品業界などを担当しながら、主に『週刊東洋経済』編集部でさまざまなテーマの特集を作ってきた。2014年~2016年まで『週刊東洋経済』編集長。現在は出版局で書籍の編集を行っている。

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