GSユアサが秘める悩み、エコカー用電池で脚光だが…

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 「モバイル機器用とは違い、EVには大容量・高電圧を扱う技術が求められるが、GSユアサは航空宇宙や産業分野で大型電池のノウハウを10年以上も積んでいる」(三菱自動車)。「大型で最も実績があり、自動車用としていちばん技術がしっかりしている」(ホンダ)などの声だ。現在、世界中で自動車メーカーがHEV、EVの開発を急いでいるが、GSユアサは他の複数のメーカーとも商談を進めている最中だ。

この成長市場で、GSユアサは盤石の地位を手にしたかに見える。が、実は今、最大のネックに直面している。コスト競争力の問題だ。

「どうしてあそこはこれだけ安い価格を提示できるんだ!」

最近、GSユアサの社内で、こんなどよめきが起こった。某自動車メーカーが12年ごろに発売を予定するEV用電池の見積もり競争でのこと。中国の電池大手BYDや、サムスン系など韓国系電池メーカーが、自社の価格を大きく下回る価格を提示したのだ。「うちの価格の数分の1だった。いくら製品力で差別化しても、このままでは負ける」。GSユアサ幹部が危機感を吐露する。

中国、韓国の場合、日本よりも光熱費や法人税負担が軽いというメリットはある。意図的に安い価格提示をした可能性だってある。しかしGSユアサの側も、弱点を抱えているのは確かだ。それは、量産品での経験の少なさ。

携帯電話など民生家電用リチウムイオン電池は、過去10年間で生産金額は1・5倍に達した一方、価格は3分の1に下落した。GSユアサは、ニッチな大型用途には強いが、こうした熾烈な価格競争に耐え抜いた経験がない。

先ほどの中国メーカー、BYDの場合、民生家電用でも世界4位のシェアを有する。民生家電用リチウムイオン電池首位、三洋電機の本間充副社長の言葉がまさに言い表している。「われわれは家電での経験が絶対に生かせると思ったから、自動車用リチウムイオン電池にも参入した。量産技術の蓄積なしに、自動車用での競争力は保てない」。

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