GSユアサが秘める悩み、エコカー用電池で脚光だが…
これらの合弁で注目すべき点は、ともにGSユアサが過半数を出資、主導権を握っていることだ。トヨタとパナソニックの合弁、日産とNECグループの合弁など、電池メーカーと自動車メーカーとの他の合弁では、電池メーカー側が過半数を出資している会社はない。
「主導権にはこだわった。結果としてのマジョリティ(子会社化)ではなく、合弁交渉の前提条件として、マジョリティを要求した」と依田社長。経営の主導権を握ることで、技術流出の抑制、合弁相手以外への電池供給など、さまざまな事業展開を図ることが狙いだ。事故が起きた際の責任は重くなるが、子会社化すればその分業績への貢献も拡大する。
今、市場には日本の名だたる総合電機メーカーが勢ぞろいし、アジア、欧米の電池メーカーも続々参入している。図体の大きいライバルが群雄割拠する中で、GSユアサの事業展開を評価する株式アナリストの声は少なくない。「信頼性が重要視される自動車業界において、先行しているアドバンテージは大きい。現状では業界内でも優位なポジション」(ゴールドマン・サックス証券)。野村証券も「日系完成車メーカーへの供給先確保、合弁会社における主導権も握っており、同事業は高く評価できる」とリポートした。
GSユアサの強さの核心は何なのか。三菱、ホンダの両社が口をそろえて答える。「それは大型のリチウムイオン電池での実績である」と。
外国勢の攻勢に緊迫、コスト競争力の問題浮上
日本の航空宇宙技術の威信を懸けて、種子島から発射を続ける「H2Aロケット」。01年からこれまで15回打ち上げられているが、その電源には、GSユアサのリチウムイオン電池が搭載されている(電池容量は100アンペアアワー(Ah)以上)。
大型リチウムイオン電池において、GSユアサは日本の独占的なプレーヤーだ。1990年代後半から実用化を進め、H2Aロケットのほか航空衛星用や原子力潜水艦などにも搭載される。EV用リチウムイオン電池も一つで最大50Ahほどあり、大型電池の部類に属する。つまり、同類の製品群で豊富な実績を積んでいたことが、GSユアサがEV用で選ばれた一つの決め手であった。