これらのコメントから導き出されるキーワードは、(1)和やか、(2)丁寧・真摯、(3)フィードバック、(4)不合格対応、(5)動機付けだ。
学生は、面接では多かれ少なかれ緊張しているものである。その緊張をいかにほぐして、「素」の学生にしてあげられるか。和やかで話しやすい雰囲気作りが非常に大事になってくる。それは、面接官との距離であったり、面接官の話術や話題、頷きやさりげない気配りであったり、さらには受付や控室で語りかけであったりもする。言いたいことを伝えられたという学生側の満足感のためだけでなく、そもそも面接は、「普段の学生」を確認した上でのジャッジでなければ意味がない。入社後のミスマッチを起こさないためにも、企業・学生ともに「素」対「素」で対面できることが理想である。
学生に対する真摯な対応も重要である。表面的な質問だけで終始するのではなく、本当に学生のことを知ろうとしているのか、学生を知るだけでなく、企業のことも学生に知ってもらおうとしているのかが問われる。学生からの質問に対する回答内容、姿勢にも注意が必要である。通り一遍の説明はすぐに見抜かれてしまう。
学生の好印象コメントとして多いのが「フィードバック」。以前、選考落ちした理由を質問してきた学生に、「そういうことを質問することがダメなんだ」と回答した企業があった。本来、企業側に評価内容をいちいち説明する義務はない。ただし、学生からすれば、点数ではっきり序列ができあがる学力テストとは違って、面接には客観的な点数がないだけに、面接での自分の評価は気になるところだろう。面接での良かった点・悪かった点、改善アドバイスなどは、次回の面接に必ず活かされる。学生を育てる意味でも、何らかのコメントをしてあげることも一度検討してみてほしい。もちろん、ノウハウ的なアドバイスは必要ない。
面接後にリクルーターがフォローする会社もあるようだが、面接後のコミュニケーションは結果連絡のみに終わる企業が大半であろう。不合格の場合には、何も連絡がないことも多い。仮に、「採用」ということでは自社と縁がなかった学生も、将来は「顧客」となる可能性だってある。これは、B to Cの会社だけでなく、B to Bの業態の会社も同様である。さらに、「採用」ということだけを考えても、学生一人ひとりの発言が、同期や後輩たちの就職活動に影響を及ぼしていくことを忘れてはならない。ネット社会となった現在では、その影響の程度は計り知れないものになっている。採用に至らなかった学生とも良好な関係を築くことができれば、それに越したことはないだろう。わざわざ敵を作る必要はない。
上記の最後の学生コメントを見ると、「面接10分、質疑応答20分」となっている。これは全員の学生に同様の対応がされているのではなく、最初の10分で「合格」と判断した学生に対して、すぐに面接担当者が残りの面接時間を「動機づけ」のために費やしたものと推測される。企業の中には、面接での質問内容、時間配分などを画一的に運用しているケースがある。大量に応募者がある人気企業にありがちで、面接慣れしていない一般社員まで面接官として借り出されるために、マニュアル化せざるをえない部分もあるだろうが、それは誤りである。それぞれの学生に応じて、面接内容は臨機応変に対応することが必要である。限られた面接時間を有効に活用しよう。
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