【産業天気図・パルプ・紙】需要回復見込めず10年度に入っても「曇り」続く
09年10月~10年3月 | 10年4月~9月 |
製紙業界の天気予報は、2009年度後半、10年度前半ともに「曇り」のままとなりそうだ。過去5年間苦しんできた原油、古紙、インクなどの原燃料高が一服したほか、原油燃料に頼らない生産体制の整備が整ってきたおかげで、09年前半は利益面では一息ついた格好だ。だが、昨年9月に始まった減産が、すでに1年以上もの間続いているにもかかわらず、需要の回復が見られない。これが先行きの見通しに重くのしかかっている。
当初、08年6月、7月の値上げ実施による反動需要減を機に、流通在庫の積み上がりを解消するため、3か月程度の減産で十分に対応できる見込みだった。ところが、リーマンショック以降、国内景気の急激な冷え込みによって、紙需要が大幅に減退する。洋紙の最大の需要家は自動車やエレクトロニクス、不動産業界で、主にチラシやカタログなどに使われる印刷用紙だ。消費需要が一気に冷え込んだため、メーカー各社がチラシ、カタログといった宣伝費から削り始め、次いで製品が売れないために取扱説明書などの冊子も出なくなる。
一方、部品メーカーから完成品メーカーの工場への移動や、製品のパッケージに使われる段ボールの動きも鈍くなる。新聞広告も削減されるので新聞紙のページ数が減り、新聞用紙も減少する。
この流れはいまだに回復に向かってはいない。エコカーや、一部の家電製品などの需要は回復しているものの消費全体の中ではほんの一部に過ぎず、紙需要の本格的な回復には程遠い。折悪しく、07~09年にかけて、大王、日本製紙、王子、北越と、立て続けに新抄紙機が稼働入りし、国内の生産能力は向上していた。このため、各社とも老朽設備の停機、廃棄を決め、08年上期のピーク時に比べて生産能力を90%程度にまで落とす体制を作っているが、期待していたアジアをはじめとする海外拡大も、この円高で出荷には及び腰だ。逆に安価な輸入紙がシェアをのばし、15%程度にまでなってきた。
中国の紙需要に回復の兆しが見え始めてはいるものの、まだ勢いは弱い。一方で、中国の紙需要の復活を期待し、古紙価格がじりじりとあがり始めている。円高が落ち着き1ドル100円前後にまで戻ってくれば輸入紙の攻勢もやみそうだが、原価高となってはね返ってくる面もあり、単純には喜べない状況だ。
(小長 洋子)
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