ケータイから始まる出版革命、アメリカの先を行く日本の電子書籍《アマゾンの正体》
ではコンテンツの作り手は電子書籍とどう向き合っているのか。
『サラリーマン金太郎』をはじめ多数のヒット作を生み出した本宮ひろ志氏は、早くから電子メディアの可能性に着目し、CD‐ROMでのコミックス化などさまざまな試みをしてきた。ケータイ、パソコンを問わず、本宮氏の作品は多くの電子書店で読むことができる。
「映像や音楽は新しいメディアが登場するたびに商機を広げてきたのに、漫画は本で稼ぐしかなかった。電子メディアの登場は漫画にとって大きなチャンスだと思った」と、本宮氏の作品の版権管理などを行うサード・ラインの天満重宏社長は言う。
本宮氏は過去の作品の電子書籍化にとどまらず、05年には『サラリーマン金太郎』の描き下ろしを楽天のインターネットサイトで無料配信するという意欲的な試みを行っている。音が出るようにしたり、コマ配置も単純化するなどの工夫も施したが、残念ながら「せっかくのコンテンツを有効に使ってもらえず、狭い範囲での利用にとどまってしまった」(天満氏)。その後の『金太郎』の連載はネットではなく、紙の雑誌に戻ってしまった。
ただし、ネットで新作を発表する流れは続いている。イーブックでは望月三起也氏が描き下ろし『W7』を発表している。同社の鈴木社長は「全ページがフルカラー。しかも望月先生は予定のページ数を15ページもオーバーした。こんなことが可能なのも電子コミックだから。紙ではこうはいかない」と自信を見せる。
ケータイでも藤子不二雄Aや永井豪といった巨匠からBL、TLの人気作家まで、新作を発表する動きが相次いでいる。