ケータイから始まる出版革命、アメリカの先を行く日本の電子書籍《アマゾンの正体》

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小



整備が必要な二次使用のルール

もう一つ、電子書籍で見過ごせないのが二次使用権の問題である。通常は出版社と著者間の取り決めは紙の媒体に限られ、電子書籍化など作品の二次使用の許諾権は著者が持っている。ただ、自前で版権管理ができる大物作家ならともかく、普通の作家は創作活動が手いっぱいで版権管理まで気が回らず、結果的に出版社任せにしてしまいがちだ。

電子書店側でも「著者と直接交渉するのが筋だが、出版社でないと連絡先がわからない著者もいて、大量に仕入れようと思ったら出版社経由にするほうが楽」(イーブックの鈴木社長)と言う。

鈴木氏は「電子化や配信のコストは当社が負担しているのに出版社は売り上げの3割を取ってしまう。その何%が著者に支払われているかというと、印税と同じでせいぜい10%程度にすぎない。当社が著者と直接契約するときは通常24%支払っている」と不満気だ。

講談社の漫画雑誌『モーニング・ツー』は今年5月から雑誌発売と同時にネットでも同じ漫画が読めるサービスを始めた。これに対して著者に使用料は払われていない。

むろん出版社側にも言い分はある。「ウェブ公開は無料なので、あらためて掲載料を支払うことはしない。ちなみにアイフォーン版は有料販売だが、今までの漫画コンテンツの販売実績からいって、ごくわずかの売り上げしか見込めず、そこから利益が上がると考えることは現段階では非現実的。利益と呼びうるほどのものが発生したら、その時点で作家さんとの利益配分を考える」(『モーニング・ツー』の島田英二郎編集長)。

新たな市場の創出時に混乱が生じるのは仕方がない面は確かにある。だが、電子コミック市場がこのまま拡大していけば、二次使用問題の整備は避けて通れないだろう。

電子書籍時代の到来を迎え、携帯キャリアにも新たな動きが出てきた。KDDIは今年6月、電子書籍を楽しむことを前提にした携帯電話「ビブリオ」を発売。端末は本を読む雰囲気に近い横スライド方式。小さい字でも読みやすいように画面も3・5インチと大型化した。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事