“弱肉強食”を疑似体験させるハリウッド流放任教育《ハリウッド・フィルムスクール研修記5》

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 本来、プロデューサーとして、スケジュールを管理しつつ、2人を仲裁すべき立場の私が、脚本家と一緒になって監督と全面対立してしまったことが大きな失敗の原因でした。

結局、この作品の成績評価は「Satisfactory(及第)」という残念な結果でした。しかし、私もこの失敗から自分なりのコラボレーションの技術を学び、昨年製作した残りの2本では「Excellent(優秀)」の評価を取ることができました。

アメリカのフィルムスクールの中でも1年間に3本の短編製作は最も多いと言われていますが、試行錯誤を繰り返して進歩していくためにはこの本数が必要だったのか! と1年目を終了してみて実感しています。

評判を決める作品と人間性

この「Narrative Workshop」を通じて、学生たちはクラスメートの本当の力量を知ります。批評は得意でもいざ自分で作るとまったくダメな学生もいれば、普段は物静かで目立たない学生がとんでもないブラックコメディを作ったりもします。1本目の作品で評価の低かった学生は、2本目からは誰からも声がかからなくなります。

また、小さなコミュニティなので人間性についての評判もすぐに広まります。アメリカ人は一見フレンドリーで性格が良さそうに見えますが、いざ一緒に仕事をしてみるとエゴが強すぎて他人のことをまったく考えない学生もたくさんいます。こうして声がかからない学生たちは、人気のない学生同士でチームを組み、次の作品でも結果が出ないという悪循環に突入していきます。

そして1年目が終わる段階で、各学科2~3人の生徒が学校側からKick Out(退学)の宣告を受けます。アメリカ出身者だけでなく、南米や中東からはるばる留学に来ていた学生も容赦なくKick Outされ、夢半ばにして故郷に帰っていきました。

フィルムスクールで学ぶ“弱肉強食”の意味

このように書くと、AFIはただ生徒に好き勝手に映画を作らせているだけ、のように思われるかもしれませんが、実際は製作の物理的サポートは他のフィルムスクール以上にしっかりしていますし、座学の授業では面倒見の良い先生もたくさんいます。

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