“弱肉強食”を疑似体験させるハリウッド流放任教育《ハリウッド・フィルムスクール研修記5》



 アメリカ人たちからすれば、言葉も通じず意思疎通もままならない私のような外国人は「ババ抜きのババ」。私は自分の企画に固執することは早々にあきらめ、外国人にも理解がありそうなアジア系アメリカ人の監督に「君の企画に興味があるので、シノプシス(ストーリーを簡潔に表した数行の文章)を見せてくれる?」と頼み、トイレに走り個室で読んだ記憶があります。

結果、そのアジア系アメリカ人の監督と、一般的に話すスピードがゆっくりとしていると言われるアメリカ南部出身の脚本家とチームを組むことができ、初日を終えることができました。アメリカに来たばかりの私にとっては、映画のストーリーうんぬん以上に、コミュニケーションを取れることが最重要課題だったのです。

全体プレゼンで、スタッフの奪い合い

チームを組んでから1週間後には、撮影監督・美術監督・編集といったいわゆる技術スタッフの学生たちを含めた1年生全員(150人程度)の前でのプレゼンテーションが予定されます。

このプレゼンテーションは技術スタッフに企画への興味を持ってもらい、チームに参加してもらうためのもので、プレゼン後には会場で連絡先を交換しつつ、1週間で書き上げた脚本の初稿を彼らに渡していきます。

プレゼン大会の直後から、電話やメールでのフォローを入れつつ、ランチやミーティングを設けて自分のチームにスタッフを獲得していきます。AFIでは監督・脚本家・プロデューサーはそれぞれ28人いるため28個のチームができるものの、たとえば美術監督は半分の14人しかいません。美術監督を獲得できなかった半分のチームは、外部から探すか、最悪は自分たちでセットや小道具を作る必要が出てきます。

“専門家”とは当然クオリティにも差が出ますし、本来は撮影に集中したい監督が美術の準備に追われるような事態にもなります。私は韓国人の女性美術監督に対して、広告会社時代の名残で持っていた韓国でも有名な日本人タレントのプレミアムグッズを贈呈するなど、なりふり構わず口説き落としました(笑)。

人間関係が重要になるのは、監督やプロデューサーにとどまりません。たとえば撮影監督は毎回5~6人のクラスメートに照明担当やカメラアシスタントとして自分の撮影を手伝ってくれるように頼まなければなりません。ニューヨーク大学の名門映画学科出身にもかかわらず、このような関係を息苦しく感じて早々に退学していった撮影監督もいました。

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