“弱肉強食”を疑似体験させるハリウッド流放任教育《ハリウッド・フィルムスクール研修記5》
照明の当て方や撮影手法に加えて、「コラボレーション」という名の“技術”を徹底的に身を持って学ぶ。これもまた、ハリウッドの疑似体験だといえるでしょう。
アカデミー賞脚本家と学生による批評大会
2~3カ月の準備期間を経て短編映画を作り上げるわけですが、完成した後には、同学年全員の前での上映する「Narrative Workshop」という授業があります。
授業をコーディネートするのはフランク・ピアソンという御年84歳の脚本家。過去にアカデミー脚本賞1回、ノミネート2回、加えて全米脚本家組合やアカデミー賞主催団体の会長も務めた業界の重鎮です。
上映後にチームメンバーはスクリーンの前に座らされ、ピアソン氏からの講評と学生たちからの辛辣な評価にさらされます。その間、作った側の学生は一言も反論することを許されず、45分程度を耐え忍ばなくてはなりません。中にはあまりの酷評に泣いてしまう学生もいます。
ちなみに私の1本目の作品はといえば、「ストーリーや演出は未熟だが、役者とロケ地の素晴らしさに助けられた」というのが評価でした。
映画『硫黄島からの手紙』に出演していたロサンゼルス在住の日本人女優を主役に起用し、『ターミネーター』で使用されたロケーション(写真上)やフォトジェニックなマリブビーチ(写真下)で撮影したことから、演技は素晴らしく絵もきれいでしたが、いかんせん肝心のストーリーは準備不足がたたりました。
■ターミネーターのロケ地で撮影
■画面に映えるマリブビーチ
チームを組んだ後、監督と脚本家の意見がまったく折り合わず、2カ月強の準備期間があったにもかかわらず最終稿が出来上がったのがなんと撮影の前日。監督は当日の朝になっても明確なイメージを持つことなく、撮影がスタートしてしまいました。