「シャープを含め、企業再生に甘い薬はダメ」 パナ社外役員に就く冨山和彦氏が直言する

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――社外取締役に就任予定のパナソニックは総合家電の代表格ですが、今後どういった経営が必要になるのでしょうか。

会社というのは人間が幸せになるための単なる道具にすぎない。パナソニックという企業体にも、歴史とか伝統とかいろいろなものが影響しながら、得意不得意があって、それが会社の遺伝子だと思う。今抱えている事業群が、その遺伝子とフィットしている間は、傘下に持てばいいし、フィットしなくなったら、やめればいい。

――パナソニックの遺伝子とは何でしょうか。

それがないのかあるのか、僕はまだわからない。でも、そういうものを、作っていく必要がある。従来は「総合」というコンセプトが生きてきたが、わけも分からず総合化というのは、もう今は活きる時代じゃなくなった。だからそこを構築し直している途中じゃないの。日立製作所も一生懸命、日立ウェイを作り直そうとしている。コマツはかなり前からコマツウェイというメーカー論を持っている。そういった”ウェイ“が大事。本当のシナジーの源泉となるから。

ソニーがアップルを買っていれば

冨山和彦(とやま・かずひこ)●経営共創基盤(IGPI)CEO。東京大学法学部卒。ボストンコンサルティンググループ入社後、コーポレイトディレクション設立に参画(後に社長)。産業再生機構ではCOOに就任、解散後、IGPIを設立。オムロン社外取締役、ぴあ社外取締役のほか、経済同友会副代表幹事なども務める。6月からパナソニック社外取締役に就任予定(撮影:梅谷秀司)

――事業領域が広いと遺伝子も見つけにくいのではないでしょうか。

そうかもしれない。パナソニックもソニーも、古くて大きな会社だが、「古くて大きな会社」というのも、一つの変えられない遺伝子だ。古くて大きな会社はどう戦っていくべきか、常に考えなきゃいけない。

大きな変化が起きている”破壊的イノベーション“の瞬間は、常に小さくて若い会社が勝つ。アップルがソニーに勝った理由もそう。アップルは、創業経営者のスティーブ・ジョブズ氏で全てのことが瞬間に決まったが、ソニーは20万人いる巨大な会社。(当時のソニー社長だった)出井(伸之)氏は、ソニー史上、初めての新卒一括採用のサラリーマン経営者で、独断専行はできなかった。

じゃあ、大企業はどう対処するか? 小さくて若い企業を買うしかない。アップルのジョブズ氏は、かつてソニーに身売りに来たらしいが、あのとき買って放置しておけば、いまのアップルを連結できた。放置できたかという問題は大いにあるが。

日本の電機メーカーに限らず、全産業に共通することだが、事業と機能のポートフォリオに完成形はなくて、常に入れ替える必要がある。入れ替える中で、10~20年入れ替えないものもあれば、2~3年でやめるものも出てくる。当初はコア技術から生まれた事業であっても、途中から競争要因がずれるものも出る。その時点で新陳代謝してしかるべきだ。

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