「シャープを含め、企業再生に甘い薬はダメ」 パナ社外役員に就く冨山和彦氏が直言する

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――鴻海はシャープを用いて有機ELの開発を加速させたいようですが。

液晶パネルの生産は、世代が下りる(新しくなる)に従って、投資規模が増えているビジネス。市場もある程度大きくなっているが、それを超える勢いで技術的に高度になり、投資規模が増えている。ところが、値段は上がるどころか、あっという間に下がっていく。これでは回収できないし、大型液晶なんて、ほとんど誰も儲かっていないと思う。これは有機ELでも、同じ問題が起きうる。

人間が目で見る商品だから、私たちが価値を認識できないと、意味がない。結局、すでに4Kテレビも、値段が下がっている。「私たちは特殊で、すごい技術を持っています」と言ってみたところで、エンドユーザーが認識できないものに価値なんてない。いい技術はカネになる技術だから。その事業領域にい続けることに意味があるのかすごく疑問だ。

むしろ液晶のバリューチェーンの中では、接着剤とか薄膜技術であるとか、川上のメーカーですっと儲かっている企業もある。こっちがコモディティ化しないのは、作れる企業が1社か2社しかないから。パネルのように、2~3年ごとに、何千億円単位の投資が必要なわけでもない。

下請けは最終製品をやりたくてしょうがない

鴻海の子会社になることが濃厚なシャープ。再生はできるのか(写真は2015年度第3四半期決算説明会に臨む高橋興三社長。撮影:今井康一)

(鴻海のような)いわゆる下請けメーカーって、”最終製品やりたくてしょうがない症候群”があるもの。買い叩かれている感じがあるから。最終製品メーカーになると王様みたいな序列がある。特に、テレビをやると王様中の王様みたいな序列が、昔はあったわけですよ。だから猫も杓子も、バカみたいにテレビやって、失敗した。僕に言わせれば、経済的に意味のない序列感は会社を潰す原因になる。

鴻海は最終製品にこだわらず、EMS(電子機器受託製造サービス)だけやっているか、部品とか供給しているほうがよかったかもしれない。

――それでは鴻海はどのようにシャープを経営するのがいいのでしょうか。

単なるポートフォリオとして、全く別の経営をする。投資会社的にね。シナジーなんか追求しない方がいい。

それに、シャープと一体であることが事業の競争力に貢献するとは、私はまったく思えない。というのも、総合化した製造業というのは、必然的にものすごく分権組織になる。事業ごとにも、生産・開発・営業といった機能ごとにも、エリアごとにも、分権的になってしまう。この手の組織というのは、「任せて任せず」という、まさに松下幸之助さんが言っているあの間合いがすごく大事。要は間接統治を上手にやらないといけない。

ゴウ氏は創業経営者で、比較的シンプルな組織を、強烈なリーダーシップで成長させてきたタイプ。ただ今後は、自立的に各事業、各機能が発展するようなメカニズムを、植え込んでいかなければならない。

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