鴻海の子会社化でもシャープの前途は厳しい 再びディスプレーへの多額投資によぎる不安
経営再建に向けて、提携先を探すと発表してから4カ月。シャープがようやくその相手を選んだ。
2月25日、シャープは台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業に対し、第三者割当増資を実施することを発表。実現すれば、鴻海グループがシャープの発行済み株式の6割以上を手に入れ、シャープは鴻海の子会社になる。買収は6月23日のシャープ株主総会の承認を経て、9月初旬までに実行される見通しだ。シャープの独立した企業としての歴史は、社長7代・103年間で終止符を打つ。
今後、シャープの取締役は、13人中9人もしくは3分の2以上が、鴻海の指名に従って選任される見込み。経営陣も鴻海の息のかかった人物で構成されるものとみられる。
鴻海の出資総額は、普通株とC種類株をあわせて、合計4890億円。そのほか、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行が持つ総額2000億円の優先株の半分を、鴻海が1000億円で買い取る。さらに、鴻海がシャープに対して取り決めた額を支払わない場合、デポジット(前払い金)として1000億円を没収できる、といった合意もなされた。というのも、鴻海は2012年、出資を約束しながら果たさなかった“前科”があり、シャープが当時の教訓を今回の交渉に活かしたためだ。
5000億円弱の大金をつぎ込む中身
新生シャープに対しては、調達した資金を何に使うか、注目が集まるところだ。実はその多くは、シャープの栄光と凋落の原因となった、ディスプレー事業に充てられる。うち2000億円は有機ELの立ち上げ投資に、1000億円は中型液晶の高精細化・合理化投資にそれぞれ充当。「長年培ってきた液晶ディスプレー技術を最大限に活用し、世界の主要な有機ELディスプレーのサプライヤーになる」とブチ上げた。
シャープがディスプレーで再起を賭ける背景には、ディスプレー業界に一大変化の波がおよんでいることが挙げられる。
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