鴻海の子会社化でもシャープの前途は厳しい 再びディスプレーへの多額投資によぎる不安
現在、「iPhone」(米アップル)をはじめ、スマートフォン(スマホ)のディスプレーには、主に液晶が搭載されている。が、アップルは2018年から、iPhoneのディスプレーに、有機ELを一部採用すると見込まれている。そうなれば、他のスマホメーカーもアップルに続けと、有機EL採用の動きに出ることが想定され、今後、液晶から有機ELに需要がシフトする可能性がある。液晶メーカーにとっては、市場変化に乗り遅れると大きく売り上げを落とすリスクがある一方、有機ELの量産を成功させて、需要を取り込めれば、大きく成長できるチャンスでもあるのだ。
鴻海にとっては、自身が液晶メーカーを傘下に持つものの、アップルの求める品質には及ばず、子会社製造のディスプレーがiPhoneに採用された実績はない。本業の組み立て事業が頭打ちを迎えている中、より多くのマージンを得るためiPhone向けに自社製ディスプレーを納入することは、鴻海の悲願でもある。そのため、資金不足ゆえに進んでいなかったシャープの有機EL開発を一気に加速させて、アップルのサプライヤーの一角に食い込みたい思惑があるようだ。
2月25日にシャープが発表した資料には、「2019年までにスマートフォン向けの5.5インチで年間約9000万枚の生産をめざす」と謳っており、狙いは5.5インチディスプレーを持つ、iPhoneの「plus」シリーズとみられる。iPhoneの年間販売台数が約2億台であることを考えれば、目指すシェアはかなり大きく、鴻海のトップ、郭台銘(テリー・ゴウ)董事長の野望の大きさが窺えよう。
勝負を賭ける有機ELでは後発組
しかし、このシャープの有機ELによる復活のビジョンも、バラ色というわけではない。すでに有機ELの分野では、韓国のサムスン電子やLGエレクトロニクスが先を走っているからだ。
「成長資金5000億円弱のうち、2000億円も有機ELに投資すると、再びバランスシートが極めて脆弱な会社になってしまう」と、ある業界関係者は見通す。今でさえ負債が7000億円もあり、自己資本比率は8.6%と低い(2015年12月末)。増資して多少改善したとしても、これで有機ELに過剰に投資してしまったら、現預金は減り、厳しい財務状況は変わらない。「液晶の時代はシャープが市場を切り開いたため、知的財産戦略も有効だったが、後発の有機ELではそうもいかない。そんなところで大勝負をすると、今よりよっぽど危ない会社になるのではないか」(同)という指摘も聞かれる。
それでもシャープはテリ-・ゴウ氏にすがった。シャープ側が24日朝に新たな重要文書を示したことから鴻海はその内容の精査に入っており、29日の交渉期限までに買収が成立するかどうかは、まだ予断を許さない。しかし、すでにはっきりしていることは、たとえ鴻海の傘下に入ったとしても、待っているのは茨の道かもしれない、ということである。
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