コンビニ弁当の値引きは本当に広がるのか--激戦区に見る値引き販売拡大の“火種”
工業都市、そして東京のベッドタウンとして発展する神奈川県川崎市。同市にはその肥沃な商圏を狙って、コンビニチェーンが乱立している。川崎市の人口138万人に対して、コンビニの数は537店(2007年「商業統計」)。コンビニ1店当たり人口は2570人と、全国平均(2900~3000人)を超える競争環境にある。
セブン−イレブン・ジャパンに対する公正取引委員会の排除命令に端を発したコンビニ弁当の値引き問題。実際に値引き販売は広がっているのか。“コンビニ激戦区”川崎を訪ねた。
値引き処分で廃棄費用は半分以下に
「値引きした商品から順に売れていくんですよ」。川崎市にあるセブンのオーナー、Aさんはそう苦笑する。同店では6月の公取委の排除命令をきっかけに、弁当などのデイリー品の値引き販売を開始した。
Aさんの店は交通量の多い幹線道路沿いで、最寄り駅からも徒歩圏内の恵まれた立地にある。周辺には他チェーンの競合店もあるが、これまで日販(1日当たり売上高)は、セブンの平均日販62・9万円(08年度実績)を大きく超えて推移していた。
ところが昨年、駅近くに別のセブンが出店。すると日販は前年比で約10万円も下落した。さらに年々増加する人件費が、店の経営を圧迫する。時給を高く設定しなければ、人員確保もままならない。「商品廃棄を減らせれば、店舗スタッフを増員できるかもしれない」。Aさんは値引き販売に乗り出した。
コンビニでは通常、廃棄される商品の原価はオーナーが営業費として全額負担する。廃棄をせずに値引き販売すれば、その分費用を抑制できる。オーナーにとって廃棄負担は、店の経営に直結する要素なのだ。