【海運大手3社の今期業績】宴の後の大苦悶、23年ぶりの歴史的不振
最も頭が痛いのはコンテナ船である。コンテナ船は、リーマンショック後の米欧景気後退の影響で、日本郵船ではアジア→北米航路の4~6月期実績が13万TEU(Twenty−foot Equiavalent Unitsの略。20フィートコンテナ1個分に相当する荷物量)と、前年同期(18.7万TEU)から3割も落ちこんだ。つれて通期見通しを下方修正。期初は前年同期(71.3万TEU)比5.6%減の67.3万TEUの見通しだったが、今回、同20%減の57万TEUに大幅下方修正した。商船三井ではアジア→北米航路の積み取りが前年同期比18%減少、アジア→欧州航路は45%も減少した。貨物量の激減で運賃も低迷。川崎汽船では上期の運賃をアジア→北米航路で31%、アジア→欧州航路で45%それぞれ落ちこむとみている。
商船三井(08年11月脱退)を除く大手2社が加盟する太平洋航路安定化協定(TSA)は、北米向け運賃について、2002年8月以来7年ぶりとなる異例の期中値上げを荷主に要請。要請幅は、500ドル/FEU(Forty−foot Equiavalent Unitsの略。40フィートコンテナ1個分に相当する荷物量)、実施時期は8月10日からだ。TSAに加盟していないコンテナ世界最大手のデンマーク、マースクラインも500ドル/FEUを要請。商船三井は800ドル/FEUのピーク・シーズン・サーチャージ(PSC)を同日付で導入する。川崎汽船もPSCを導入する模様だ。ただ、この程度の値上げでは依然として北米航路は不採算であるほか、異例の期中値上げがどこまで浸透するかも未知数だ。
下期のコンテナ船の見通しについて、日本郵船は「荷動きはそんなに増えるとは見ていないが、欧州向け運賃は7月に一定の修復をした。500億円の予定だったコスト削減は800億円まで出来そうで、特に下期に効果が出てくる」(甲斐経営委員)。日本郵船は運賃値上げの影響を織り込んでいる。商船三井もコンテナ船の荷動きは増えると見ている。運賃修復やPSC導入を下期見通しに織り込んでいるかは不明だ。川崎汽船は、下期はさらに1ケタ台前半の荷動き減少を想定。通期ベースでも対前期比1ケタ台前半の荷動き減少を覚悟している。運賃については7月に欧州向けが上がり、8月にPSCも乗るが、全体として運賃が下期に大きく改善するとは見ていない。
以上を前提として、大手3社はコンテナ船部門の経常利益見通しを大きく引き下げた。上期の修正幅を見ると、もともと300億円強の上期赤字と見ていた日本郵船の修正幅が小さいものの、部門赤字の絶対額は各社300億円台と大差がない。一方、下期は0億円(日本郵船)~200億円の赤字(川崎汽船)とバラバラ。修正幅を見ても、日本郵船と川崎汽船は120億円~160億円のマイナスで似通っているが、商船三井はわずか10億円の下方修正と、他2社と大きく異なる。
コンテナ船の部門経常利益見通し:
期初 上期 下期 通期
日本郵船 ▲320億円 160億円 ▲160億円
商船三井 ▲130億円 ▲70億円 ▲200億円
川崎汽船 ▲140億円 ▲80億円 ▲220億円
今回修正 上期 下期 通期
日本郵船 ▲340億円 0億円 ▲340億円
商船三井 ▲320億円 ▲80億円 ▲400億円
川崎汽船 ▲380億円 ▲200億円 ▲580億円
【修正幅】 上期 下期 通期
日本郵船 ▲20億円 ▲160億円 ▲180億円
商船三井 ▲190億円 ▲10億円 ▲200億円
川崎汽船 ▲240億円 ▲120億円 ▲380億円
(注)日本郵船は「定期船」部門の経常利益見通し