【海運大手3社の今期業績】宴の後の大苦悶、23年ぶりの歴史的不振

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 コンテナ船部門で、川崎汽船は50億円の追加コスト削減をするとしているのに対して、商船三井は100億円積み増すとしている。積み増し額では商船三井のほうが多いが、コスト削減の絶対額では、川崎汽船が300億円から350億円にするのに対して、商船三井は170億円を270億円にするので、川崎汽船のほうが大きいといえる。日本郵船は期初に500億円のコスト削減をするとしていたが、4~6月期にコスト削減額が50億円多かったことを受けた計画上方修正で、今回、800億円に削減幅を新たに増やしている。コスト削減は係船によるものから港湾関連費用の削減など「ありとあらゆるもの」(日本郵船の甲斐経営委員)になる。

コンテナ船部門のコスト削減額:

期初    今回修正   積み増し額
 日本郵船  500億円 800億円  +300億円
 商船三井  170億円 270億円 +100億円
 川崎汽船  300億円 350億円 +50億円

2007年までの10年間、年率2ケタで伸び、10年で貨物量が3倍になったことを受けて新造船の発注が激増。発注から竣工まで通常2年、繁忙期には4年ものタイムラグがあることから、コンテナ船は09年~11年まで世界全体で年1割ずつ運搬能力が増えることが見込まれている。ところが、足元では3割強の能力が過剰。需給ギャップが大きいことから運賃が下落、各社は赤字運航を余儀なくされている。コンテナ最大手のAPモラー・マースクグループのコンテナ船会社・マースクラインが1~3月期に398億円の営業赤字をコンテナ部門だけで計上。4~6月期は貨物量・運賃とも下落、さらなる赤字拡大が見込まれている(マースクラインは8月21日に4~6月期決算を発表予定)。世界の主要コンテナ船15社の営業赤字の合計額は09年に1兆円にのぼると7月頭に見られていたが、現在ではそれが2兆円に達するとの見方が出てきている。

コンテナ船は竣工まで造船所に建造代金を分割で前払い(5回分割が通例)。途中解約するとそれまで支払った建造費が返ってこない契約になっていることが多く、途中解約する動きは現状ほとんどない。また、コンテナ船は船型が特殊なことから、他の用途への改造も困難で、他用途船への改造による供給過剰の緩和もあり得ない。リーマンショック後に新造船の解約が相次ぎ供給過剰が緩和されたバラ積み船と違い、コンテナ船は、新造船を発注した会社が経営破綻し自動解約される以外に、供給過剰が緩和される方法は、ほぼ皆無だ。

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