アン・マルケイヒー 米ゼロックス会長--大切なのは誠実なリストラ、リーダーはフェアであれ
取締役でもなかった2000年、経営危機にあった米ゼロックスの社長兼COOに突如抜擢された。その後、会社の再建に奔走する一方、新事業の立ち上げにも成功したパワフルウーマン。この7月には、黒人女性のウルスラ・バーンズ氏にCEOの椅子を譲り、自らは会長に退いた。リストラ時のマルケイヒー流危機管理術とリーダーシップの秘訣とは何か--。
--サマーズ国家経済会議(NEC)委員長やグーグルのシュミットCEOらとともに、オバマ大統領の経済顧問チームのメンバーを務められていました。オバマ大統領の経済政策は成功すると見ていますか。
もちろんです。ビジネス界の代表としてこのチームに加わっていましたが、政権発足後に発表した景気刺激策は非常にバランスの取れたものです。社会保障に手厚く予算を配備し、社会・経済の安定化を図る一方、アメリカの国力維持に不可欠なIT分野への投資も強化している。ただ即効性のある政策ではありませんから、時間はかかるでしょう。
--不況下でも安定的と言われてきた事務機業界ですが、今回の世界不況の影響は予想以上ですね。
欧米や日本の事務機市場が成熟化する中で、この何年間かは私たちにとってロシアが最大の成長の源泉でした。それがこの世界不況で、与信の面でも為替の面でも最も影響を受けてしまいました。大きな成長源だったところが、短期的には最も大きなマイナスの源泉になってしまったわけです。ただ、これは一時的なものと考えており、いずれは成長軌道に戻ってくるはずです。
--00年の社長就任時、会社は営業システムの改革失敗による混乱や不正会計問題に襲われ、経営危機の渦中にありました。当時と今回の世界大不況と、どちらをより深刻に感じていますか。
9年前の経営危機は、今回と比較にならないほど深刻なものでした。会社は連邦破産法11条適用寸前まで追い詰められていたのですから……。それに比べて今回は、バランスシートも健全ですし、事業もきちんと利益が出ています。過去に厳しい時代を経験し危機にどう対処すべきかを学んだからこそ、今があるのだと考えています。教訓としては、顧客重視の姿勢やキャッシュの大切さ、危機という逆風を生かして会社をいかに健全な状態に改革断行していくか、などです。