アン・マルケイヒー 米ゼロックス会長--大切なのは誠実なリストラ、リーダーはフェアであれ
--01年にドキュメント(文書)のアウトソーシング事業を立ち上げ、今や4000億円弱の規模(全社売上高の2割)にまで育っています。これは主に「オフィスのコピーをこれだけ減らせます」と顧客に提案するコンサル的業務です。より多くのコピーをしてもらう従来のビジネスを否定するものですが、なぜ、こうした事業を発想できたのですか。
それは単純明快、お客さんが望んだからです。お客さんはマシーンが欲しいわけではありません。ソリューションやサービスを求めているわけです。お客さんが「プリントを減らしたい」と言えば、それを手伝いましょう、というのがわれわれの考え方です。ですから、何も難しいことを発想したわけではなく、ただお客さんのニーズに対応した、というだけなのです。
サービス事業に進出 ライバルより優位に
--しかし、普通はお客さんが「プリントを減らしたい」と言ってきても簡単に対応はできません。そのためには、社員の考え方をガラリと変えないといけません。
もちろん簡単ではありません。サービスを売るということは、ハードウエアを売るのとはまったく違うこと。つまりサービス事業に進出することなのです。従来、ゼロックスがしてきたことと違うことをやらなければなりません。
でも、私たちはサービスというものが、ビジネスの世界でどんどん大きくなってきていることにあるとき気づいて、その変化に柔軟に対応しようと考えました。おそらく企業にとって最も大切なことは、変化に素早く適応することです。対応次第では、変化は飛躍のチャンスにも、逆にリスクにもなる。私たちは変化に積極的に対応しようと考え、能力を持った新しい人材を社外から迎え、事業を育ててきたわけです。
--ライバルのキヤノンやリコーも同じようなサービスに力を入れ始めていますが、先行者利益は優位に働きますか。
かなり優位にあると思います。この8年間でわれわれは非常に多くのことを学んできました。全世界で直販していることも強みです。キヤノンやリコーのように代理店を使っていると、同じレベルのサービスを全世界で提供するのは非常に難しい。そこは、マシーンを売ればそれでよいという時代との大きな違いです。