アン・マルケイヒー 米ゼロックス会長--大切なのは誠実なリストラ、リーダーはフェアであれ
コミュニケーションが危機の会社を一つにする
--前回の経営危機では、9万人以上いた社員を3年間で6万人まで減らす大リストラを敢行しました。社員の士気を維持するために世界中を飛び回り説得したようですね。
どんな状況であれ、リストラが社員の士気に影響を与えないということはありません。ただ大切なのは、社員と密にコミュニケーションを図ること、そして誠実にリストラを行うことです。なぜ、こんなことをしないといけないのかを、正直に社員に伝えないといけません。そうすれば、「この人は会社を健全にするために、フェアにやっている」と、社員に理解してもらえるのです。
--そうしたコミュニケーションの重要性は、過去のキャリアの中で学ばれてきたのでしょうか。
そのとおりです。私は1992年から95年まで人事部長を務めましたが、そこで働く人の士気や取り組む姿勢が仕事にとっては大切なのだという思いを強くしました。
リーダーの重要な仕事の一つは部下たちが「自分たちのやっていることは、意味のあることなのだ」と信じられるようにしてあげること。コミュニケーションはリーダーとそこで働く人との間で、そうした信念を共有するのに不可欠なのです。
--トップや上司が組織の中に一体感を作ることが大事なのですね。
「グレートリーダー」は「グレートチーム」を作ります。私は「フォロワーシップ」と呼んでいるのですが、優れた指導者は「この人が言うなら」と、自分についてきてくれる層を作ることができます。これが重要で、そうした人たちはリーダーの言ったことによって新しい発想を得たり、やる気を出したりして、組織を活性化させていくのです。
--「グレートリーダー」とはカリスマのことですか。
特別に人を惹きつける個性を持ったカリスマではなく、もっと実直な指導者ということです。隠し事をしない、きっちりした価値観を持っている人。それが真のリーダーシップだと考えています。